絶滅危惧種、小田急ワイドドア車の数奇な運命 開口幅は2m、混雑緩和の切り札だったが…

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1000形のワイドドア車は大きく2回に分けて製造され、1次車として1991年に4両編成と6両編成が2本ずつ、合計20両が製造されたほか、翌年には2次車として4両編成4本の16両が造られた。大きな扉が目立つ外観だが、基本的なデザインは1000形のままで、側面の行先表示器は電光表示のLEDを当初から使用していた。

小田急電鉄の1000形。廃車が進み引退がささやかれている(写真:HAYABUSA/PIXTA)

特に珍しい車内設備を備えていたのが1次車で、座席の収納機能を備えている車両があった。1次車は、4両編成と6両編成を組み合わせて10両編成で使用する形で造られ、実際に営業運転に就いた当時は、朝ラッシュ時間帯の準急で使用されていた。この4両編成の小田原方2両と、6両編成の新宿方3両に座席の収納機能があり、山手線の6扉車のように座席を折りたたんで使用することもできたが、実際には使用されずに終わっている。

また、扉の上には車内案内表示装置が設置され、行先や種別、停車駅の案内を行っていた。現在では当たり前に導入されている設備だが、ワイドドア車が登場した頃から採用が始まった設備でもある。1000形のワイドドア車では最初の編成でLED式を、2番目の編成で液晶テレビ式を採用していたが、特に液晶のタイプは先進的だった。だが、液晶テレビに組み込まれた部品の劣化によって画面が見づらくなってしまったからか、後に撤去されてしまった。その後、LED式の車内案内表示装置が再度設置されている。

1000形のワイドドア車では、扉の幅を広げたことで窓の数も少なくなっている。だが、開閉可能な窓にはパワーウィンドウを備え、自動で開閉できるように造られていたことも珍しい。

2次車では、ワイドドア車独特の外観を引き継いだものの、座席の収納機能をやめている。このほか、扉間の座席の数は1次車の5人がけから6人がけに増やし、扉の上にある車内案内表示装置にはLED式が採用された。座席収納機能をやめたことで座席の奥行きを詰め、結果として車内の収容力も増しているが、後になって1次車も座席収納機能をやめ、座席の奥行きを詰める改造を行っている。

2次車は4両編成のみが造られ、既存の1000形を小田原方に連結して8両編成を組む形で、おもに各停(各駅停車)で使用されていた。

座席の数が少ないワイドドア車

ワイドドア車は一応の効果を発揮したものの、扉の幅を広げた分、座席の数が少なくなっている。それゆえに、使い勝手の良い車両とはいえなかった。このためか、1997年頃から扉の幅を縮小し、車内では座席の数を増やす改造が行われた。

1000形の勇姿(筆者撮影)

この改造では扉の幅は1.6mに縮小され、扉間の座席は7人がけに増やして既存の車両に合わせている。ただし、先頭車では7人分の寸法が確保できずに6人がけとされたほか、車両の端の部分は2人がけのままとなっている。既存の車両では、端の部分が4人がけや3人がけに設定されているので、座席数を若干減らした程度にとどめている。

外から見ると、扉の幅は2mのままに見えるが、改修後は1.6mだけ開いて止まる仕組みで、外観は最小限の改修で済ませている。

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