OECD事務総長、「多国籍企業に対抗せよ」 租税回避に歯止めをかけることはできるか
それに伴い各国とも行動を加速させている。アイルランドは節税スキーム「ダブルアイリッシュ」を終了させ、オランダは、多国籍企業の納税回避に悪用できないようにするため、開発途上国と租税条約について再交渉する。欧州委員会は、法律に抵触するおそれのある加盟国の税務慣行に対する調査を各国の支援で開始し、注目を集めている。
同時に厳格な銀行の守秘義務がまだ多くの国で適用されていた2009年以来、税の透明性を後押しする大きな変化を目の当たりにしている。「税の透明性及び税務目的の情報交換に関するグローバル・フォーラム」には、今や120を超える国・地域が加盟しており、加盟国に対して70以上のコンプライアンス評価を公表し、500以上の提言が、世界全体で税の透明性を改善する法律YR慣行の改正をもたらした。
世界に広がる、税の自動的情報交換
次の目標は、税に関する自動的情報交換(Automatic Exchange of Information, AEOI)の実施である。われわれはG20諸国と緊密に協力して、新たなグローバルスタンダードを作っており、すでに93カ国が2017年または2018年までに最初の自動的情報交換を開始することを明言。先月、ベルリンにて、51の国と地域が上述の多国間協定に署名し、実施に向けた第一歩を踏み出した。
ルクセンブルク、スイス、シンガポールをはじめとする世界の主要金融センターが本ルールへの参画を表明しており、さらに多くの国々がそれに続く予定である。この強固なスタンダードによって、各国当局は所得と海外資産を追跡できるようになる。この努力は実施前にもすでに効果をもたらしており、税回避者による自己申告で、2009年以降、OECDとG20諸国に370億ユーロの追加歳入がもたらされた。
さて、今、重要なのは、この税に関する自動的情報交換の利益が開発途上国に拡大されることが最優先課題である。開発途上国は、なんとかこの動きに乗りたいものの、他国の協調なしで脱税を取り締まるにはリソース不足を感じている。OECDは、開発途上国に対して、この新たなグローバルスタンダード策定に本格的に関与するよう促している。OECDの「国境なき税務捜査官」などの取組には、開発途上国が、課税逃れによる自国の税源浸食や、税収の違法な国外流出阻止を支援するという特別な狙いがある。
今こそ各国政府が国際協調に動く絶好の機会である。企業の利益は、実際、製品やサービスを開発する際にかかった本当のコストに基づくべきであり、国内企業よりも多国籍企業にとって有利になるようなずる賢い税逃れは取り締まられるべきである。あまりにも多くの多国籍企業が全利益の1~2%しか払わなかったり、または、まったく税を納めていなかった。
より力強く、クリーンで、より公正な成長を実現させるための本プロジェクトの成功は、週末のG20ブリスベン・サミットを皮切りとした今後12カ月が最も重要となる。歴史的な変革を成し遂げるには厳しい決断と政治的勇気が必要である。現状では、それ以外方策はないのだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら