OECD事務総長、「多国籍企業に対抗せよ」 租税回避に歯止めをかけることはできるか

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11月10~11日、北京で行われたAPEC首脳会議におけるアンヘル・グリアOECD事務総長(写真:新華社/アフロ)
現在、OECDは税に関する「グローバルスタンダード」を作ろうと努力している。OECDに加盟する先進国だけでなく、発展途上国も巻き込み、真のグローバルなルールにしようとしているところだ。オーストラリアのブリスベンで行われるG20においても、先進国首脳に働き掛ける予定。どのようなルールを作ろうとしているのか、アンヘル・グリア事務総長に寄稿してもらった。

 

金融危機から6年が経過した今も、多くの先進国が高い失業率、成長の停滞、脆弱な公財政という問題を抱えている。

そんな中、現行の国際租税制度では多国籍企業が極めて少ない税金を納めなくていいよう画策できるようになっている。銀行の守秘義務も、個人が世界のどこかの国に資金を隠して税逃れすることを容認している。

このような慣行は、各国の税制の健全性を侵食し、政府の能力を害し、経済成長を弱め、納税者の圧倒的多数を占める市民の信頼を損ねている。課税の方法や使途を正せば、社会格差への対応や、雇用創出、教育やインフラなどの公的サービスを賄い、イノベーションへの投資奨励にもつながる。

税制の透明化と、利益移転の阻止

OECD(経済協力開発機構)の取組により、国際税制は国際的な政策議題のトップに押し上げられた。われわれの活動はG20に支持されている。租税回避地(タックスヘイブン)を容認できないと宣告し、100年前に作られた国際租税枠組みはすでに役に立たないと舵を切ったG20は称賛に値する。

世界経済の約90%を占める、G20を含む44カ国は、OECDに現状打開ができる策を求めた。OECDの「税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクト」の狙いは、税制上のルールを透明化し、多国籍企業が各国間の税法のすき間を縫ったり、実際に経済活動が行われている国・地域とまったく関連のない低税率国・地域に人為的に利益が移転させられるのを阻止したりすることである。

われわれは目まぐるしいスピードで対応している。BEPSプロジェクトの最初の報告書は9月に公表し、1年後には最終的なパッケージを公表することになる。これらの取組により、企業が巨額の利益を海外で非課税で保有する「金庫」は無力化されるだろう。また、企業はパテントボックス使って実質的な利益を上げる活動を行っていない国にその利益を移転させることもできなくなる。

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