「獺祭」「黒霧島」ヒットの陰に"離れる戦略" 逆境から躍進した旭酒造、霧島酒造の秘密

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霧島酒造のホームページにも「考動指針」として「夢がなくては始まらない」「会社の主役は『私』です」「やり過ぎぐらいがちょうどいい」など、独自のメッセージを社員に投げかけて、旧来のコミュニケーションから離れて、自主性とチャレンジ精神を鼓舞しています。

変化を鼓舞し、社員が自主性を発揮する主役になることを求めており、よくある「頭を使わず、ついてくるだけでいい」という古い管理思想から離れていることがわかります。

新しい目標・製品・スローガンで「上手に離れる」べし

苦境からの飛躍を実現させた2社にかぎらず、過去、危機からのV字回復を成し遂げた企業を見ていると、危機から生まれる空白こそが、イノベーションのサイクルを始める起点となっていることがわかります。同じことをやり続けても、行き場がもうないという八方ふさがりの状態が、最後に過去を手離すことをリーダーに思いつかせることになるからです。

【離れる戦略の基本5原則】

○強みを生かしながら古い顧客から離れる
○古い目標を手離し、新しい目標を掲げる
○消費者と新しいコミュニケーションを始める
○社員と新しいコミュニケーションを始める
○古い自己像から離れ、新しい自己像を高く評価する顧客と出会う

2社は共に「最高においしい製品を磨き作り上げる」という1点だけはぶれていません。その本質的な目標を固く維持しながら、ほかの古いすべてのものから正しく離れています。

現代日本のビジネスシーンは、もはや頑固一徹な執着ではなく、健全な形で「離れる戦略」を実践できる企業と個人が飛躍を始めているのです。

大切な人ではありながら古い愛を手離すことで、人が新たな成長を実現できるときがありますが、企業が社会と新しい関係を育むためには、古い姿に閉じ込められることを避け、より多くの消費者に出会い愛される新たな自社像を打ち立てなければならない時代を迎えているのです。

鈴木 博毅 ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント

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すずき ひろき / Hiroki Suzuki

1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。貿易商社にてカナダ・オーストラリアの資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略論や企業史を分析し、新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。『「超」入門 失敗の本質』(以上、ダイヤモンド社)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『3000年の叡智を学べる 戦略図鑑』(かんき出版)など著書多数。

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