倒産の危機から、売上高2倍の龍角散

新社長が徹底した「離れる戦略」の秘密

 厳しい時代に伸び続けている企業は何が違うのか? 苦境から奇跡的な復活を遂げた企業は何をしたのか? 成功しているビジネスパーソンは何を実践しているのか? その秘密は「離れる戦略」にあります。過去の常識から離れ、商習慣から離れ、古い組織構造から巧みに離れることで、勝者の座に就くのです。この連載では、勝ち続ける者だけが知っている「離れる戦略」を、古今東西、最新の戦略理論もからめて易しく読み解いていきます。
龍角散の服薬ゼリー商品

3年以内に倒産、これはムリだと思った

「ゴホンといえば龍角散」

この懐かしいフレーズを覚えている方もいるでしょう。伝統薬の龍角散は1797年に作られ、1871年に創業(会社設立1928年)の非常に長い歴史を持つ製品です。秋田・久保田藩の製品を全国に販売し、テレビの黎明期からCMを打つなど全国的な知名度を持つ製品に成長を遂げていきます。

ところが1970年代からジリジリ売上が減少、伝統と知名度のある製品ゆえに、社内の危機感は薄いままに時間が過ぎていきます。8代目、現在の藤井隆太社長が就任した頃(1995年)には、負債が40億円と年間売上とほぼ同額に達している状態でした。

小林製薬や三菱化成で実務経験を積んでいた藤井氏は、財務状況を見て「5年以内、早ければ3年で倒産する」と判断します。それほど事態は切迫していたのです。

広告を打ってもオリジナルの龍角散(パウダー状)は売れず、役員会では「商品寿命が終わった製品」という意見まで出ます。愕然とした藤井社長が「ではどうするんだ?」と聞くと、マーケットのもっと大きい分野、たとえば胃薬などに進出すべきという指摘さえ出ていました。

この時、藤井社長が決断していなければ、龍角散ブランドの胃薬が世に出て、現在ののどを守る人気製品はすべて市場から消えていたかもしれないのです。

過去の成功に酔って迎えた倒産一歩手前

もし胃薬の自社製品に舵を切ったらどうなったか。藤井社長は「ウチはたぶん存在していない(倒産したはず)」と指摘します。

主な理由は2つ。ひとつは医薬品に最も重要な副作用情報の問題。体に取り入れる医薬品は、効き目と同時に必ずある副作用を、どれだけ正確に確認できているかが大きな課題です。200年間の歴史ある龍角散ではなく、異分野の胃薬などに挑戦すれば、財務に余裕がない状態で発売はできなかったはず。

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