日清紡が103年目の「再出発」、太陽電池製造装置を軸に多角化《新「本業」で稼ぐ》
太陽電池製造装置は中国 生産、脱受け身で巻き返し
従来の日清紡の太陽電池製造装置の製造の手法は、かつての半導体・液晶製造装置産業と同様の、「古きよき日本」の流儀を踏襲したもの。すなわち、世界最先端を誇る顧客企業それぞれ独自の製造工程に完璧に対応し、特定の温度で加工を開始できる予熱装置を組み込むなど、特別注文の塊とする--。しかも、新しい装置の開発ごとに3割から4割ほどの新機軸が盛り込まれる。
しかし、こうした特注機への対応は、当の半導体製造装置産業では10年前に終焉している。
「00年のITバブル崩壊以後、特注機を大量に必要とする日本の半導体メーカーはほぼ皆無となった。当社としても採算が悪化する特注機は受注しない方針」とは独立系の半導体製造装置メーカー会長の弁。半導体製造装置産業では、むしろ海外半導体企業向け標準機の供給へ舵を切っているのだ。
日清紡としても、急拡大するアジア需要の取り込みは必要。そのための短中期的な解は、7月に開始した中国・江蘇省の子会社での装置の組み立て加工だ。9月にまず中国の太陽電池メーカーへ納入が始まった。11年5月には新工場が完成し月産30台体制となる。そして中長期的な解が、受け身一方ではない主体的な仕様提案への取り組みだ。材料メーカーと協業し、独自技術を開発、そして納入先である太陽電池メーカーへ独自技術の採用を働きかけるのだ。
半導体集積回路や液晶パネルでは日本勢のシェアが大きく低下した。太陽電池では「二度あることは三度ある」ではなく、「三度目の正直」と踏ん張りたいところ。
それを製造装置で支える日清紡の使命は重大なだけに、鵜澤靜・日清紡ホールディングス社長は、こうした太陽電池製造装置をはじめとする新たな多角化を、自社にとっての「再出発」と位置づけている。
(石井洋平 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年10月30日号)
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