バーゼル�下で銀行は多額の自己資本が必要に。格付上はポジティブ《ムーディーズの業界分析》
アラン・ローラン
バーゼル銀行監督委員会(以下、バーゼル委員会)は9月半ば、自己資本と流動性に関する規制の枠組み草案を発表した。今回の枠組みに示された、合意された自己資本の定義および水準には、現規制からの大幅な改善が見られるが、完全施行が2019年という日程はやや驚きである。しかし、当初の意図と比べて幾分トーンダウンしてはいるものの、新たな枠組みは、銀行が厳しい状況に対応する能力の向上促進につながり、債権者に長期的に恩恵をもたらすものとなろう。
バーゼル委員会の9月12日の決定は承認済みで、来年にも施行予定のマーケット・リスクの枠組み改定を補完するものである。自己資本の枠組み変更に関するバーゼル委員会の論点はほぼ出尽くしているが、「大きすぎて潰せない」銀行に対する追加的資本賦課や、コンティンジェント・キャピタル(条件付資本、自己資本比率の水準が一定水準を下回るなど、一定の条件[トリガー条項]が満たされると自動的に、もしくは発行体の選択に基づいて、発行体の資本に転換されるという仕組み)の取り扱い等については決定に至っていない。これらの項目については、11月に韓国で開催予定のG20サミット中に最終決定がなされるものとみられる。
新たな枠組みにおける所要総資本比率は、リスク・アセットの8%と変更はないものの、銀行は質・量ともに自己資本の拡充を求められることとなる。最低所要Tier 1資本比率は4%から6%に引き上げられ、今回初めて、全銀行に4.5%の最低所要普通株式(中核的Tier 1資本、または普通株等Tier 1と称される)が求められる。バーゼル委員会はこれまで、Tier 1資本の半分以上を普通株式で保有すべきであると示唆していたが、最低保有比率を設けていなかった。