一辺倒からマルチをこなせるバランス力を--『新世界 国々の興亡』を書いた船橋洋一氏(朝日新聞社主筆)に聞く
──インタビューは幅広いテーマになっています。
たとえば、最も尊敬しているシンガポール顧問相のリー・クアンユー氏はこのインタビューが私としては7回目。小さい国だが、シンガポールから世界がどう見えるかを押さえておきたかった。
最近急速に有名になってきたのが国際ジャーナリストのロバート・カプラン氏。もうすぐ新著『モンスーン--インド洋と米パワーの将来』が出版されるが、話題になるだろう。深く考える人だ。それから、アンドリュー・クレピネビッチ氏。アメリカのシンクタンクである戦略予算評価センターの所長で、「エアシーバトル」というコンセプトを最初に主張した、軍事思想家として最先端の人。
さらに挙げれば、米国務省政策企画局長のアンマリー・スローター氏。ネットワークが世界のパワーになるとかねて主張してきた。加えて、金融はもちろん忘れてはいけない。リーマンショック以降の新世界だから。そこで、アメリカのマクロ政策の司令塔であるローレンス・サマーズ氏。国家経済会議(NEC)議長にとって、国々の興亡という観点から世界がどう見えているのか聞いた。
──8月に亡くなった歴史家のトニー・ジャットさんの話への反響が大きいようですね。
惜しい方をなくした。改めてヨーロッパの「実験」の巨大さを教えられた。日本にとっていろいろなヒントが含まれている。ヨーロッパは、われわれが抱えている課題と1歩も2歩も先に格闘して、彼らなりの解を出してきている。
たとえば、歴史問題の克服にしてもそうだが、大きい国と小さい国が完全対等とはいかないが、ぎりぎり対等に近いところで共同体を作るということに対して。今は各国が敵国視せず軍事プランニングを作っていない。それをセキュリティ・コミニュティというが、どうやってそうできたのか、教えられることは極めて多い。