東京を「最先端のクリエイティブ・シティ」に 「イノベーション・シティ・フォーラム」が問うもの

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――アップルのスティーブ・ジョブズさんがテクノロジーとリベラルアーツの交差点がアップルだと言っていた。やはりこの分野にも交差点が必要なように思います。

そのとおり。ICFは、その交差点をつくろうとしている。

今までは、都市問題の専門家、アーティスト、情報通信産業がバラバラに存在していた。たとえば都市問題の専門家も、どうしても機械論的な都市計画者になってしまう。大きなビルを一棟つくると、ここで3000人が働き、1日5000人の往来が生じると計算する。その計算に合わせて電車の駅には何分に1回電車が停まればいい、周辺の道路は何車線あればいいといったことを機械的に計算していく。これで立派な計画ができました、となる。まさに機械論的な都市計画で、そこで人はどのように生きるのか、という考えが入っていない。ビジョンがなければ、本当は都市の設計はできない。いかに人が生きるようになっていくか、というライフスタイルについてのビジョンをもっと強化していくべきだ。その議論をわれわれは、発展させたい。

アート、デザイン、あるいはパフォーマンスといったクリエイティブ産業の人たちにも同じ課題がある。どういう環境の中にクリエイティブを置くかは極めて重要な要素であり、必然的に都市の議論の中に入らなければいけないはずだが、そこも切り離されている。

具体的に言うと、ストリート・カルチャーをやるような場所が必要なのかもしれないし、あるいはミュージアムが必要かもしれない。あるいはギャラリーがたくさん入っているような古い建物が必要なのかもしれない。そうした考えを深めていくためのジャンクションがICFだと思っている。

クリエイティブのネタは尽きない

(撮影:今井康一)

――2015年に行う予定の第3回ICFのテーマは?

2020年のオリンピックに向けて都市のあり方を考えていく、ということは次回も変わらない。第2回はアート寄りだったが、クリエイティブ産業には、デザイン、ファッション、建築などいろいろとある。漫画アニメ、ゲームなど、クールジャパンコンテンツについてもフォーカスしていきたい。ネタは尽きないと思う。

一番重要なのは、東京をクリエイティブ・シティにしていこう、ということ。東京を、新しいソフト産業を輩出してくセンターであるという位置付けにしていくしかないと思う。東京に行けば、最先端の情報、アート、デザイン、テクノロジーがあると。そして、そういう才能を持った人たちに会えるというメッセージ。クリエイティブ・ハブって言ってもいい。そういうイメージで東京をブランディングしていくべきではないか。安全、清潔のさらに上に、そうした都市のアイデンティティが必要だ。

――絵を描きたければパリへ、現代アートであればニューヨークへ、テクノロジー系のアートをやりたければ東京へ、というイメージでしょうか。

そう、「最先端は東京です」、と言えるようにしたいし、少なくともアジアの中心は東京と考えてもらえるようにしたい。さもなければ、韓国や中国に中心ができていく。ICFのようなものも、シンガポールがやろうと思えばできる。よほど努力をしなければ、東京は発信力を失っていくかもしれない。

2016年には政府が主導する形で、「スポーツ・文化ダボス(ダボス会議のクリエイティブ版)」を東京で開催する構想もある。ICFの発想も、ダボス会議クリエイティブ版のような会議を東京で続けて、東京のブランディングを強めようということだった。だから両者が連携するなりして、より発信力のある会議にしていければ、と考えている。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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