東京電力は大型増資ショックで株価低迷。「積極投資への備え」が目的だが、市場からは「理解できない」の声も
「10年間に営業キャッシュフローを12兆円稼ぎ出す計画で、国内の設備投資、海外への投融資、株主への安定配当等に振り分けても2.5兆円が余る。それで自己資本を拡充し、現在3.1倍のD/Eレシオ(負債資本倍率)を1.5倍に下げる、というのが中計発表時の説明だった。営業キャッシュフローで十分まかなえるのに、既存株主の価値を毀損してまで増資がなぜ必要なのか。中長期ビジョンとの整合性について、納得のいく説明が得られていない」
「現在有利子負債が7兆円あるといっても、事業の特性上、他社より圧倒的に有利な条件で借り入れ、社債調達ができる。会社は将来の金利上昇にも備えて、と言うが、仮に金利が上がればエクイティに求められるリターンはより高まる。安定配当さえしていれば、自己資本の調達コストはゼロだという誤った認識があるのではないか」と手厳しい。
今回の増資は中計を推進するために有効な財務面の施策の1つ、というのが会社の言い分だが、結果としては、手っ取り早く資本増強に走ったことで、中計で掲げた「営業キャッシフロー12兆円を創出する」という目標の“本気度合い”に疑問符が付いた面もあるようだ。
株主への利益配分の方針としては、「連結配当性向30%以上の安定配当方針」を維持するとしているが、今2011年3月期の会社計画ベースの配当性向は100%を越えており、現状ではあまり具体的な指針とはいえない。東京電力にいま求められるのは、還元方針もさることながら、増資で拡充する株主資本をどれだけ効果的に収益に結び付けるか、という見通しを示すことだろう。
(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2010.03 5,016,257 284,443 204,340 133,775
連本2011.03予 5,310,000 300,000 210,000 88,500
連本2012.03予 5,500,000 400,000 310,000 170,000
連中2009.09 2,497,898 240,695 203,958 138,164
連中2010.09予 2,610,000 155,000 125,000 39,000
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1株益¥ 1株配¥
連本2010.03 99.2 60
連本2011.03予 55.2 60
連本2012.03予 106.1 60
連中2009.09 102.4 30
連中2010.09予 28.9 30
■写真:川崎火力発電所の全景
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