「受験に英語がない国」で話せるようになった方法 「英語が怖い人」に教えたい緩やかな学び方

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実際、英語をコミュニケーションツールととらえるのであれば、細かい点にこだわる必要はないように思います。「I like it」でも「I likes it」でも意味は通じます。ネイティブの人だって間違えるわけですから、あまり細かい点を気にする必要はないのではないでしょうか。入試試験のように、ちょっとした間違いが人生を左右する完璧主義を語学学習に持ち込んでしまうと、失敗することを恐れてしまって、むしろ成長を妨げてしまうこともあります。

この点から考えると、『ドラゴン桜』で紹介されていた「東大英作文は減点法」というのはマイナスな面も大きいように思います。ミスをなくすために難しい表現を避け、簡単な表現を用いる。自分の気持ちを伝えるために、たくさん書こうとした結果、減点されてしまうというのは少し可哀想な気もします。

語学で大事なのは「点数」ではない

TOEICや大学受験の話を中心に日本の英語教育について個人の見解を書きましたが、TOEICも大学入試も、それを楽しんでできる人にとってはいいと思いますし、それがきっかけで英語の力を伸ばすことができる人がいるということも事実でしょう。

ですが、それがただ1つの方法だというわけではありません。本を読むことだってそうだし、音楽を聴くこともそうです。楽しんでやることが一番だと思います。そうすることで、その国に興味が出てくるかもしれないし、他の国の文化や考え方をより深く知ることができるかもしれません。

最後に、スウェーデンに住んでいる日本人の知り合いの話をして終わりたいと思います。彼は50年くらいスウェーデンに住んでいますが、スウェーデン語に加えて英語も話します。彼は自分の英語を「ブロークンイングリッシュ」と言っていましたが、英語で話していても十分理解できるし、コミュニケーションにはまったく困りません。

ギリシャが大好きな彼は、毎年のようにギリシャを旅行していて、ギリシャ語も勉強しているそうです。ギリシャの音楽や映画なども大好きです。ギリシャのことを愛してくれているのを感じます。

彼を見ていると人生をとても楽しんでいるように見えるし、その中には語学の学習も含まれているように思います。語学の学習はテストや点数だけではないのだと、改めて感じさせてくれました。肩の力を抜いて、楽しむこともまた大切なのかもしれませんね。

アナスタシア・新井・カチャントニ 通訳、翻訳家、ライター

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アナスタシア・アライ・カチャントニ / Anastasia Arai Katsantoni

ギリシャ生まれ。ギリシャの大学の専攻は物理だったが日本に興味を持ち、現在は通訳、翻訳家、コーディネーター、ライターとして活動。日本のポップカルチャーから伝統文化、料理まで、幅広い分野を研究。また、ギリシャで剣道を教える日本人の夫を手伝う傍ら、自らもギリシャ人に日本語を教え、日本の文化を伝えるべく奮闘中。現在はアテネ近郊に在住。ブログはこちら

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