人口1万「ジリ貧の町」に36歳芸人が移住した理由 ようやく見えてきた「住みます芸人」成功のカギ

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新商品の発表会見で「おおなんの宝」について説明する「島根県住みます芸人」の奥村隼也(写真:筆者撮影)
東京や大阪で成功するだけが人生ではない。それは芸人の世界でも同じだ。都会で売れるという目標を捨て、あえて地方での活躍を目指した「よしもと住みます芸人」たちに密着する本連載。
第7回では、「島根県住みます芸人」の奥村隼也に密着。「A級グルメ」で町おこしを目指す邑南町の住民と、彼がすぐに打ち解けられた理由とは? 執筆者はルポライターの西岡研介氏。

生まれ変わった人口1万「ジリ貧の町」

島根県の中南部、広島県との県境に位置する、人口約1万人の「邑南(おおなん)町」。ここで、町を挙げての新商品の発表会見があったのは2020年8月31日のことだった。

「おおなんの宝」――。創業百年を誇る地元老舗醤油メーカー「垣崎醤油店」と、吉本興業が共同開発した「食べる醤油」だ。醤油と、もろみ味噌をベースに、町特産の「石見(いわみ)和牛」味と「石見ポーク」味の2種類の食べる醤油を開発。石見和牛味にはさらに、地元、県立矢上高校の生徒が作った「矢高味噌」がブレンドされ、まさに同町の「宝」が詰まった逸品に仕上がった。

垣崎醤油店とともに、この「食べる醤油」の開発に臨んだのが、調理師免許を持ち、料理人として10年のキャリアがある「島根県住みます芸人」の奥村隼也(36)だ。2020年4月から、「地域おこし協力隊」として邑南町に移住し、地元生産者らの協力を得て、商品完成に漕ぎつけた。

2004年、いわゆる「平成の大合併」で、旧石見町など3町村が合併してできた邑南町はかつて、高齢化率43%超。現在も多くの地方でみられる「過疎化の進むジリ貧の町」のひとつだったという。

ところが、2013年ごろから若者たちのUターン、移住者のIターンが始まり、3年連続で「社会増」(転入と転出の差によって生じる人口増加)を記録。合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率の合計)も2.46と、国内全体の同期の割合(2015年で1.45)を大きく上回った。さらに町の支援を受けた移住者らが起業した、新たな飲食店が次々とオープンし、年間90万人もの観光客が訪れる町に生まれ変わったのだ。

その「ジリ貧の町」復活の立役者が、「A級グルメの町」を掲げ、徹底して地元の〈食〉と〈農〉にこだわったまちづくりを展開した同町役場の職員、寺本英仁(50、商工観光課課長)だった。

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