「VRの中」でデータを売って月40万稼ぐ人の実態 「好きなことを仕事にする」を実現できている

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作曲・作詞・ボーカルレコーディングを請け負う宇宙人姉妹のクリエイターユニットAUAUAのあうあうあさん、ぎーちゃんさんにも「VRChat」でお話を聞いた。2人ともメタバースでアバターを身にまとうまでは、現実世界でアニソンやゲームミュージックを手がけてきたコンポーザーだった。

AUAUAのメンバー、あうあうあさん(左)と、ぎーちゃんさん(右)。動画/画像編集、3D CGモデリング、音楽もぜんぶ自分たちでつくるっょっょバーチャル宇宙人VTuberとしても活動している(筆者撮影)

メタバースベンチャー企業であるHIKKYが開催する、バーチャルマーケット3のBGM製作者募集ツイートに応募したことで、メタバースイベントに楽曲を提供したことをきっかけに、仕事の依頼が増えていく。

「VR SNSの中で話していると『あのワールドの曲作ったんですか。じゃあウチでも』と、いろいろな企業からの打診がくるようになったんです」(ぎーちゃんさん)

そして以後のバーチャルマーケットのワールドBGMや、VRイベントBGM、VTuberが歌う曲の作曲、編曲、音源制作を請け負うクリエイターとして人気を高めていった。担当する領域によって異なるが、1曲当たりのギャランティーは数日分のアルバイト代くらいのものから、中堅サラリーマンの月収クラスとまちまちだという。

VRChatで活動するクリエイターやユーザーが集って作られたVRイベント「万物のファンタズム」にもオリジナルテーマソングを提供。勢いがあるEDMトラックに極めて中毒性が高い歌詞が合わさり、Twitter上で話題となった(YouTubeより)

業務としてはまず、クライアントからイメージボードを受け取り、2人でイメージを固めていく。しかしゲームミュージックなどの仕事と比べると、クライアントからの指示はそれほど多くない。「VR SNSのワールドやイベントにまつわる仕事だと、VR SNSの現場の中に入って詳細を見ることができるんです」(あうあうあさん)と、世界観をVR上で確かめながら自分たちの発想力を生かして自由に作れるところがあるという。

「好き」で作ったものが人を動かす

これからメタバースで、自分の技術とセンスを軸に働いていきたいと考える人へのアドバイスを聞いた。イカめしさんとAUAUA、共に「好きなことをやろう」だった。

「私は人物のモデリングが苦手だったんです。だから現実にはないファンタジーなグルメ料理とか、自分が作りたいと思うものを作りつづけていったら購入してくれるお客さんが増えていったんです」(イカめしさん)

「新たな仕事を獲得するのためにスキルアップするというのは大変です。だから自分が得意な、好きなものを作っていってください」(あうあうあさん)

ここでマシュー・ボール氏が提示した「数多のコンテンツが存在する」という要素を思い出したい。これは、ただ数ばかりが多ければいいというものではなく、ユーザーの気持ちを動かす力をもったエモーショナルなコンテンツこそが多くあるべきと考えられる。

そして好きという気持ちが生むコンテンツの熱意こそが、感動を呼ぶ。忘れてはならない。メタバースは仮想空間ではあるが、アバターの先にいるのは人間だ。だからこそ好きなことをしたい。好きなものを作りたいという感情で行動することがメタバース内で評価され、商品販売や仕事の受注といった収益につながるといえる。

武者 良太 フリーライター

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むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

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