一流人も実践「コミュ力を高める」たった1つの事 松下幸之助、盛田昭夫も「話を聞く人」だった

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中曽根さんはどちらかというとワンマンで、自分の意見を押し通すタイプに見られがちです。そのギャップと意外性に、すっかり中曽根さんに対する印象が変わってしまいました。

成功している経営者の人たちも、聞き上手な人が多かった。「経営の神様」といわれていた松下幸之助さんもその1人です。いまから40年ほど前になりますが、その松下さんから、「今度松下政経塾を作るのだけれど、あなたの意見を聞かせてほしい」と頼まれました。

そこで京都のPHP研究所に行って話をしましたが、当時松下さんは80歳を超えていて、私は40代でした。ところが松下さんは子ども以上に年の離れている私の話を、真剣に聞いてくれました。東京に帰って来て、「もう一度あなたの話を聞かせてくれませんか」と依頼があり、再度京都で講演した記憶があります。

「相手の話をよく聞くこと」で情報を得る

ソニーの創業者の1人である盛田昭夫さんも、実に話を聞くのがうまかった。飛行機や新幹線などで乗り合わせると、わざわざ私の隣の席の人に「席を譲ってもらえませんか」と交渉するんですね。それで私の横に座ると、「いまの政治はどうなのか?」「どんな人物がキーパーソンか?」「その人物の魅力は?」などと矢継ぎ早に質問してきます。もはや私が取材を受けている感じでした。

政治家にしても経営者にしても、成功している一流の人たちほど人の話をよく聞きます。相手の話をよく聞くことで情報を得るわけです。それだけでなく、「この人は真剣に自分の話を聞いてくれる」という、相手からの信頼を得ることができるのです。

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コミュニケーション力を高めるならば、まず相手の話をよく聞くことから始めることでしょう。その際には、相手の話に対して相槌をしっかり打つことが大事です。そして場合に応じてしっかりとメモを取ります。

さらに相手に話を促す場合には、「つまり○○○ということですか?」「それは○○ということでしょうか?」などと、話を自分なりに解釈して再び相手に投げかけると効果的です。すると、相手は「自分の話をよく聞いて、しっかり考えてくれているな」と感じ、さらに話したくなるのです。

田原 総一朗 ジャーナリスト

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たはら そういちろう / Soichiro tahara

1934年滋賀県に生まれる。1960年早稲田大学を卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年フリーに転身。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年戦後の放送ジャーナリスト一人を選ぶ城戸又一賞を受賞。

著書に『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』(白秋社)『戦後日本政治の総括』(岩波書店)『創価学会』(毎日新聞出版)『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)などがある。

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