中国経済の減速に潜む莫大なリスク 金融引き締め後の軟着陸は可能か

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中国の景気減速は、オーストラリア、インドネシア、ブラジルなど、1次産品の輸出国にも影響を与えている。ドイツやスイスなど、資本集約財に対する中国の旺盛な需要を満たすことに軸足を置く国々についても、同じことがいえる。

残念ながら、中国のデータは、先進国の信頼性には程遠い。電力使用量は通常、経済成長を測る最も信頼性の高い指標の1つだが、経済がサービス業へと重心を移し、セメントや鉄鋼生産など、エネルギー集約型産業の多くが減速する状況では、電力需要低迷は経済再均衡化の兆しにすぎない可能性も十分にありうる。

住宅価格の下落も、短期間に倍増以上に高騰した後の現象だ。中国が穏当で健全な修正局面にあるのか、明白な破綻に直面しているのか、判断は難しい。

中国の指導部が、13年度の第3回全体会議で承認された市場志向の改革の大半を実現しようと躍起になっているのは明らかだ。習近平主席は積極的に汚職防止キャンペーンを推進しているが、これは経済自由化を見据えて政治的抵抗力をつけるためだと考えられる。

改革努力自体が引き金になりかねない

その一方で、中国の汚職は従来、経済をマヒさせる要因というよりも経済に課された一種の負担金であり、物事のルールを民主的に改革しようとすれば、その改革努力自体が引き金となって生産高を急減させかねない、という見方も成り立つ。

中国政府は汚職を撲滅し、公害を減らし、市場を自由化して長期的な成長を確保しつつ、ソフトランディングできるだろうか。危険度は高い。もし中国の成長が行き詰まれば、米国の標準的な不景気が引き起こす悪影響よりも、はるかに甚大な悪影響を世界中に及ぼしかねない。

中国の成長率は極めて高い水準にとどまっており、下落する余地はかなり大きい。西洋諸国では、輸出と株価が潜在的に非常に大きな脆弱性を抱えている。米国と中国が引き締め政策を取っているが、FRBの策のほうが理解しやすい。しかしそれは必ずしも、米国の動向のほうが中国より重要だというわけではない。

週刊東洋経済2014年10月25日号

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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