保守派の安倍政権が「女性政策」を進められた理由 「政策的要因と政治的要因」に分けて分析した

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左派のアジェンダのなかでも、職場における女性活躍はこれまであまり成果が上がらなかった分野である。したがって安倍政権が成果を出せば、連合に支えられた民主党政権ができなかったことも安倍政権だから実現できたとアピールすることができる。

かつて小泉純一郎首相は郵政民営化法案を正当化する際に、公務員や労働組合を既得権益の擁護者とラベリングし、自らを「普通の人々」の味方と位置づけて国民から支持を集めるポピュリズムの戦法を用いた。官房長官であった安倍もこれを間近で見ていた。

小泉時代と現在で異なるのは、「普通の人々」の味方であるためには格差解消への取組が求められる点である。官邸の同一労働同一賃金に対する問題意識の背後に、このような文脈があったことも指摘できる。

なぜ実行できたのか

なぜ安倍政権は、この分野で大きな改革を実行できたのだろうか。

第1に、過去の蓄積をかなり活用できた点が挙げられる。女性活躍については野田政権で具体的制度が検討され、厚労省から経済界への働きかけも進めていた。幼保無償化も三党合意と国会の附帯決議で大きな方向性は決まっていた。安倍政権の女性政策は、こうした積み重ねの延長線上にある。

ただし職場における女性活躍は厚労省でかなり詳細に検討されていたのに対し、幼保無償化についてはそうではなかった。また同一労働同一賃金については白紙からのスタートであったと言ってよい。そのため同一労働同一賃金と幼保無償化については決定までの時間が十分にとられず、詳細な制度設計は後回しになった面もある。

第2に、経済界が安倍政権を支持していたことが大きい。経済界が最低賃金引き上げや女性活躍、働き方改革等において政府の方針を受け入れたのは、すでにアベノミクスの恩恵を受けていたことが背景にある。株価は上昇し、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざした法人税減税、規制緩和等も進められた。

甘利明は、政府は経済界に対して「従来ではここまでは無理だなというのをかなり強く要請していった」が、そのような「無理難題をお願いするにはそのための環境をちゃんとつくっていきますということで、一方で責任を受けながら要請をしていった」と述べている。

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