たとえば、ニューヨークではスタートアップ企業を訪問、ボストンではMIT Media Labの特別講義を受講、シリコンバレーでのワークショップに参加するなど、非常にゴージャスなメニューをそろえた。向上心が高く、世界的な視野を持つ優秀な学生に対し、リクルートのITにおける先進性と本気度を強烈にアピールする狙いがあった。
採用した後の「育成」の強化にも力を入れる。IT人材の採用・育成だけで、2013年度10億円を投じる、という。
2014年2月、東京・恵比寿に、IT開発センター「エンジニアハブ」をIndeed社と立ち上げた。エンジニアハブは、グローバルエンジニアを育成するためのいわばエリート養成所だ。約1億4000万人の月間ユニークユーザー数(2014年3月時点)を持つIndeedの求人検索サイトの開発に携わりながら、開発技術や手法などを学ぶ。
今後、エンジニアハブに配属されるのは、新卒・中途を合わせ50人ほど。あくまでスペシャリスト候補のみを配属するという。
「選抜の目は厳しく、エンジニアハブに配属されるのは少人数のみ。グーグルやフェイスブックに入るレベルの人材と比べても遜色ない、ピカピカの人間を配属したい」と、責任者の今村氏は力を込める。
彼らグローバルエンジニアの卵たちは、少なくとも2年間、エンジニアハブでIndeed流の開発法を学ぶ。最初の3カ月は、Indeedのオフィスがあるオースティンでトレーニングを受ける。技術、開発手法、スピード、ユーザー主義などを、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通して徹底的に身に付ける。2年間という育成機関を経て、彼らは世界で通用するスーパーエンジニアへと成長する。
成長したスーパーエンジニアたちはその後、リクルートグループの各所に散らばる。破壊的イノベーションとなる新規事業を担当する者、Indeedの開発メンバーに加わる者、残り若干名がリクルートの既存事業の進化に携わる。
IT化推進のためには、エンジニアの採用・育成だけでは当然、不十分。マネジメント自体も大きく変わる必要がある。経営が変わらなければ、意思決定のスピードが遅くなり、社内の資産を十分に生かしきれない。トップがITに弱ければ、市場のスピードやタイミングに合わせ、正しいIT投資の判断ができない。将来的に競合からの脅威に対抗できなくなる。
そこで、2014年4月、「権限」面でのIT強化策として、リクルートグループの各事業会社、機能会社にIT専門の執行役員「IT-EXE(ITエグゼクティブ)」を新しく置いた。各社のトップ陣にIT専門の執行役員を置くことで、ITへの投資、開発を積極的に進める狙いだ。
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