ゲーム「ぷよぷよ」も対応、「色弱」の人が抱える困難 劣等感が生まれがちな学校にも配慮が必要だ
色弱は、この錐体のいずれかが、一般の色覚を持つ人とは違った働きをすることで生じる。L錐体の働きが違うのがP型、M錐体がD型、S錐体がT型と呼ばれ、多くはP型とD型に当てはまる。赤と緑、ピンクと灰色などの見分けが難しく、例えば、濃い赤と緑では、どちらも黒っぽく見える。
色弱は、「色盲」などと呼ばれていた時代もあり、「白黒で世界が見えている」「色の見分けがまったくつかない」などと誤解されがちだ。しかし大半は、一部の色の見分けが困難なだけで、タイプや強度によるが、青と黄色は、一般の人たちより鮮やかに判別できたりもする。文字や形での見分けで補足すれば、日常生活にはさほど苦労しない人がほとんどだ。
ただ、とっさの判断が必要な場合や、安全に関わる場合は事情が異なる。例えば、本来は遠くからでもわかりやすく、目立つ配色であるはずの道路標識が、色弱の人たちにとっては、暗く、見えにくかったとしたら——。気づくのが一瞬遅れるだけで、大事故につながりかねない。
JISで「安全色」が決められている
こうした事態を防ごうと2018年、道路標識や避難誘導の際に使われる日本産業規格(JIS)の「安全色」は、CUDの視点に基づいて改正された。
一般的な色覚の人ほか、色弱、弱視、白内障の人を対象に、微妙に違う赤や黄色、青など約970色の中から、はっきり認識でき、安全色としてふさわしいものを選定した。安全色の改正で、色覚特性のある当事者への大規模な調査が行われたのは、今回が初めてとなる。
変更された安全色は、赤色がオレンジっぽい赤に変わった程度で、一般的な色覚の人にとっては、ごくわずかな調整に感じる。しかし、これが色弱の人たちにとっては、大きな差。各色がはっきり、くっきりと認識できるようになっているのだという。
先に登場した伊賀さんは、安全色の原案作成委員としても関わった。
「これまでも専門家の知見のもとに選定されてきましたが、見え方に関しては、当事者ではないとわからないことが少なからずあります。例えば、赤と緑の見分けをはっきりさせようとしすぎると、色弱者にとっては逆に灰色っぽく見えて識別しにくい色が選ばれてしまったりします。当事者の視点をしっかりと調査し、取り入れてもらうことが重要なのです」
東京オリンピック・パラリンピックでも対応が進んだ。実は白人には色弱が多く、12人に1人いるといわれている。色弱のほか、さまざまな視覚特性を持つ人が国内外から集まる機会とあって、対策が講じられた。
国立競技場内のトイレなどの案内表示は白と黒を基本とし、不必要に色を多用しないことで、見やすいように工夫。また、開会式で使う各国のプラカードも、黒地に黄色い文字で国名が書かれ、文字が読みやすいよう配慮された。
コロナ禍で五輪自体の開催の是非が焦点となり、こうした点には注目が集まらなかったが、本来であれば、東京からCUDを発信するよい機会になったはず。残念でならないが、大阪万博など今後の機会に期待したい。
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