同統計による倒産件数をみると、アベノミクスが始動する以前の2012年夏場までは月平均で1000件を超える倒産がずっと続いていた。
これは、経済全体は最悪期を脱していたが、大震災への対応が遅れ、金融政策の機能不全で超円高が訪れたためだ。しかしアベノミクスが始まった2013年から倒産件数は1000件/月を下回り、2014年には800件/月前後まで減少、2014年夏場までそうした状況はほとんど変わっていない。
こうした基本的な事実がまずあるのに、「円安の悪影響」ばかりに気になるのだろうか、円安を理由に倒産した企業が増えた(実際には昨年までほぼゼロだったのが、数件現れたと)という「顕微鏡でしか見えない変化」が、ヘッドラインとして伝えられているのである。単に記事を書いている記者が不勉強なのかもしれないが、実際にヘッドラインで巧みな印象操作が行われていると言えるだろう。
アベノミクスの本質から外れた増税こそ批判されるべき
仮に、円安によるコスト高に苦しむ企業の倒産が増えるのであれば、その問題の本質は、企業が原材料のコスト上昇を、販売価格に上乗せできないことである。つまり、消費の停滞で経済成長がとまり、企業による価格転嫁が難しくなっていることが問題の根幹だ。
価格転嫁が幅広く可能な経済状況に至る前に、4月に大型増税という緊縮財政政策に転じた、アベノミクスの本質から外れた政策判断のミスこそが批判されるべき対象である。
「円安倒産の真の問題」を安倍政権が正確に認識して、再増税を先送りすることが日本経済の早期復活をもたらす。であれば、脱デフレ期待を背景に、2012年末から続く株高・円安相場も長続きするだろう。
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