ECBもタカ派に急旋回だが、利上げは最速で7月に まずは量的緩和終了だが3月の政策調整は微妙
2月4日に開催された今年最初のECB(欧州中央銀行)政策理事会は従前のハト派姿勢を急旋回させる結果となった。ECBは昨年来、激変緩和措置として4月以降の拡大資産購入プログラム(APP)の臨時の増枠を提示してきた。しかし、世界的にインフレ加速が続く以上、これは難しいと筆者は考えてきた。今回のラガルド総裁会見でやはりECBが軌道修正を強いられていることが鮮明になった。
今回の会合の注目点は2つある。1つはラガルド総裁が2022年中の利上げの可能性を否定できなかったこと、もう1つは3月政策理事会での政策調整を示唆したこと、である。
過去6週間で何がECBの心境を変えたのか
まず2022年中の利上げの可能性に関し、ラガルド総裁は前回12月会合まで「非常に可能性が低い(very unlikely)」と一蹴していた経緯がある。
今回は1人目の記者が「まだ『非常に可能性が低い』にこだわっていますか。それとも前に進みますか(Are you sticking to “highly unlikely,” or have you moved on?)」と率直に質しており、これに対しラガルド総裁は「条件のない公約は掲げない。現時点ではそれに細心の注意を払うことがより重要だ(I never make pledges without conditionalities and it is even more important at the moment to be very attentive to that)」と検討の余地があることを示唆した。
前会合までの政策姿勢はあくまでインフレ高進はエネルギー主導であり、年後半には落ち着いてくるとの見通しに支えられていたと考えられる。この点、声明文には「decline in the course of this year」との表現が残されているので、中長期的にインフレ率が加速して制御不能になるとまではやはり考えられていない。
しかし、「特に短期的にはインフレ見通しは上方に傾斜している(risks to the inflation outlook are tilted to the upside, particularly in the near term)」とも明記されている。問題視されているのは短期の時間軸であり、現状が放置されれば、賃金上昇などを通じてリスクになると懸念が見受けられる。
とはいえ、前会合からの約1カ月(厳密には6週間)の間に短期的な状況が激変したといえるかどうかは直感的にわかりにくい。もちろん、12月時点の経済見通しと現状の経済見通しでは前提が異なるので、「見通しが変われば変わる」というラガルド総裁の弁明は正しい。だが、市場参加者にとっては12月見通しが最新見通しであり、タカ派旋回の説明は必要である。
この点、ユーロ圏1月消費者物価指数(HICP)の上昇率は前月比5.1%と2カ月連続で過去最高を更新しており、これ自体はECBにとってサプライズになった可能性がある。そもそも2021年下半期(7~12月)はドイツの付加価値税減税の反動から一時的に押し上げられている部分が大きかった。それが完全に剥落した2022年1月以降、HICPの減速が当然視されていたわけだが、結局、原油価格を筆頭として資源高の押し上げが強まっている。この点を重く見たという主張も理解できなくはない。
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