FRBの金融正常化で市場に漂うオーバーキル懸念 正常化プロセスの最後のテーマは利上げの終点
先週は金融市場でリスク回避の動きが広がり、今週はアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会、日本時間27日明け方)が注目される。昨年11月以降の過去2カ月余りでFRB(連邦準備制度理事会)の「次の一手」を読むゲームのテーマはめまぐるしく変わってきた。順に、①テーパリング(量的緩和縮小)ペースの加速(月150億ドルから月300億ドルへ)、②利上げ回数の上方修正(2回から3回へ)、③2022年中のバランスシートの縮小に着手、④利上げ回数の上方修正(3回から4回へ)といった具合だ。
もっとも、「インフレ加速を念頭にアクセルを踏む」という方向性は一貫しており、金融政策の影響が及びやすい2年物を中心にアメリカの金利は押し上げられている。だが、10年を超える長期ゾーンは相変わらず上昇が鈍く、イールドカーブはベアフラットニング(より長期になるほど上昇幅が小さい)が進んでいるという事実も注目される。市場参加者は性急な正常化による景気のオーバーキルを懸念し始めたといえる。
急速な正常化予想で実質金利が上昇
正常化プロセスへの期待(予想)が急速に高まったことはアメリカの金利の景色をはっきりと変えてきている。
ちょうど1年前もアメリカの金利は上昇局面にあって騒がれたが、当時はインフレ期待も押し上げられる中での名目金利上昇であり、結果、実質金利(名目金利-インフレ期待)は穏当な動きにとどまっていた。2021年はアメリカ10年債利回り(以下「名目10年金利」)と10年物ブレイク・イーブン・インフレ率(以下「インフレ期待」)が共に約0.60%ポイントずつ上昇し、実質10年金利の上昇幅はプラス0.02%ポイントとおおむね横ばいだった。
しかし、2022年初から足元までの3週間弱を見れば、名目10年金利が0.35%ポイント上昇したのに対し、インフレ期待は逆に0.10%ポイント下落しており、実質10年金利は0.45%ポイントも上昇している。金融政策の影響を色濃く受ける名目2年金利も約2年ぶりに1.00%に乗せるなど利上げ織り込みは着実に進んでいる。
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