FRBの金融正常化で市場に漂うオーバーキル懸念 正常化プロセスの最後のテーマは利上げの終点
パンデミックを経て経済・金融情勢は当時と大きく異なるため単純比較は危ういが、2022年1月現在の10年-2年スプレッド(約0.79%ポイント)は2015年12月の利上げ着手時(約1.25%ポイント)よりもかなりタイトであり、ここから複数回の利上げを積み重ねることに関し、市場の不安は根強そうである。12月FOMCの議事要旨において「バランスシート規模の調整に依存することでカーブのフラット化が防げる」との意見が出ているのも、すでにカーブ形状がオーバーキルを警告していることへの不安の表れといえよう。
かかる状況下、正常化プロセスにおける次のテーマ、そしておそらく最後のテーマは、「利上げは何回までやるのか」である。言い換えれば、利上げの終点である中立金利を何%に見込むのかという論点だ。
現在、ドットチャート上の中立金利は2018年12月以降、2.50%で横ばいが続いている。少なくとも今年に関しては長期金利も株価も安定しているので「年4回(3・6・9・12月)」という市場織り込みを丁寧にトレースするのがメインシナリオだろう。
ただし、インフレ率は前年比であるため、昨年の騰勢を踏まえれば、今年春および秋には著しく下落する可能性がある。実のところ、「年4回」というメインシナリオは4~6月期を越えてみなければ何とも確証が持てないというのが筆者の基本認識であり、だからこそ「年3回」を今は予想している。同じく6月にもバランスシート縮小という話もあるが、インフレ率が大きく落ちる中でそこまで円滑にいくのか。
今年利上げが進めば、来年以降はペースダウン
こうして今年だけでも障害は多く考えられ、2.50%という中立金利ははるか彼方の水準に思えてくる。なお、中立金利と近似する市中金利は30年金利であり、これは現在、2.10%程度だ。中立金利を2.50%以下と考える向きが多そうなことを示す。とはいえ、均せば「2.00%~2.50%の間で利上げが終わる」と考えている向きは多そうであり、それは8~10回程度の利上げを意味し、今年から2024年にかけて毎年3回ずつでも間に合う水準である。
仮に今年4回利上げした場合、その後のペースははっきり鈍化する可能性を忘れてはならない。なお、仮に中立金利を2.00%程度と低く見積もった場合、今年4回利上げすれば、2023年と2024年は2回ずつでも間に合うことになる。これは現在のドットチャートが想定するペースを下回る。
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