FRBの金融正常化で市場に漂うオーバーキル懸念 正常化プロセスの最後のテーマは利上げの終点

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過去を振り返れば「FRBの利上げの最高到達点は10年金利の最高到達点だった」という経験則がある。

だとすればアメリカ10年金利の上昇余地は中立金利が2.50%とすると、あと約0.70%ポイント、2.10%だとすればあと約0.30%ポイントしか残されていないという話になる。それはそのままドル高相場の寿命に直結する話でもあり、「中立金利はどこにありそうか」というテーマは今年はともかく来年以降のドル円相場を議論する際には重要である。

ただし、「ドル安=円高」とは限らない

もっとも、昨年来の名目実効為替相場を見ると、「ドル安=円高」とは限らない。ドル円相場予想においては最高到達点が125円なのか、120円なのかという議論は引き続き入念に検討を重ねるべきだが、方向感として円安が進む地合いは大きくは変わらないと考えておきたい。アメリカサイドの敵失をもってしても、今の日本の政治・経済情勢を踏まえ、日本への投資を手控えたいと考える投資家が多いのではないだろうか。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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