ECBもタカ派に急旋回だが、利上げは最速で7月に まずは量的緩和終了だが3月の政策調整は微妙

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一方で、かねてECBが強調するようにインフレ率の上昇はあくまでエネルギー要因が半分であり、実際、コアベースでは反落し始めている。だからこそ、ECBの「一時的」という従前の基本姿勢が維持されるとみられていた。事実、今回の政策理事会のタカ派旋回を受けて、株価下落やユーロ上昇など市場は大きく反応しており、予想外だったことがわかる。「市場との対話」は十分ではなかった感がある。

あえて解釈を進めるとすれば、インフレは短期から長期へ、という圧力が増しており、これを放置すると目標をオーバーシュートする可能性を認識しているのだろう。これはラガルド総裁の「われわれはインフレ目標に近づいており、中期的な影響は今後、明らかになる」との発言からも感じ取れる。ウクライナ侵攻をめぐる地政学リスクやこれに伴う原油や天然ガスの価格急騰は過去6週間で顕著になった事実でもあり、それがECBの姿勢を揺るがしたという解釈は納得できる。

3月に何が起きるのか、3つのシナリオ

次に、利上げとともに注目されるのが3月政策理事会における政策調整である。ラガルド総裁は、上述の「条件のない公約は……」との発言に続けて「われわれは非常に慎重に評価し、データに依存することになる。その作業は3月に行われる予定だ(As I said, we will assess very carefully, we will be data dependent, we will do that work in March)」と続けている。

この作業とは具体的には、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)終了と引き換えに4月から始まるAPPの臨時増枠(現状200億ユーロ→4月以降400億ユーロ→7月以降300億ユーロ→10月以降200億ユーロ)を再考するという話である。冒頭言及したように、激変緩和措置とはいえ量的緩和のアクセルを踏む行為はもはや世界的には相当ずれた対応に映る。

3月の決定内容を予想するのは時期尚早かもしれないが、現時点で考えられる選択肢として、①ペースの下方修正(例:4月以降200億ユーロ→7月以降100億ユーロ→10月以降は終了)、②臨時増枠はせず4月以降も200億ユーロで据え置き、③3月末でAPPも終了などが考えられる。

「①→②→③」の順にタカ派色が強まるが、後述するフォワードガイダンスの関係も考えると、さすがに③は考えにくい。①や②にしておけば今後状況が変わった際、柔軟にペースを変えればよく、裁量も確保できる。

いずれにせよ、声明文においてこれまで記載されていた「われわれはいずれの方向にも調整する(we will adjust in either direction)」の「in either direction」が削除されており、「次の一手」が緩和的ではなく、引き締め的になることは確実と言える。

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