エスコートサービスの女性たちとの付き合いで満足していたダニエルさん。でも、60歳を目前にして「このままじゃいけない」とようやく気付いたという。ちょっと変わり者なのだ。会社を早期退職した今は久美子さんしか「友だち」がいないらしい。
「イギリスの庶民は自転車に乗ったり、歩いたりするのが娯楽のようです。彼も1人で走ったり、ジムに行ったり、サイクリングや山登りに行ったりという生活。私とはよくしゃべります。両親といる時間が長い彼はジョークが古臭いんですけど(笑)」
高齢の義両親との距離感は…
ダニエルさんはロンドン市内に1戸建ての持ち家があり、現在は久美子さんと2人暮らしだ。徒歩10分のところに両親が住んでいて、彼は毎日のように通って介護をしているという。90代半ばの父親は数年前に大腿骨を骨折してしまい、同じく高齢の母親だけではサポートできないからだ。
現在、ヨーロッパでは移民に対する目線が厳しくなっているという報道を目にすることがある。久美子さんは義理の両親との関係は大丈夫なのだろうか。
「お義母さんは優しい人ですが、義理の父は反日感情があったみたいです。人種差別というより戦争を経験した世代だからでしょう。でも、今は自分の体のことでいっぱいいっぱいなので、私に構ってはいられないようです。私が訪れても疲れさせてしまうので、彼の実家とはほどよい距離を置いています」
2人が結婚したときにはすでにコロナ禍が始まっていた。日本にいる久美子さんの父親は癌を患っているが、久美子さんは結婚後に帰国できていない。
「母とは週に2回ぐらいメールのやりとりをしています。『こっちは変わりない。健康に気をつけて』と言ってもらえますが……。イギリスは食事があまり美味しくないし、たまには日本に戻りたいです」
とはいえ、久美子さんはイギリスでの結婚生活に安らぎを覚えている。結婚前は収入の3分の1を占めていた住宅費の心配がなくなっただけではない。家事のうちで掃除と洗濯は積極的に担い、声を荒らげたりすることも一度もないダニエルさんとの相性がいいのだ。
「会社員時代も保守的で新しいことに挑戦しようとせず、毎日同じことを繰り返す生活をしていたようです。日本語もまったく覚えられません。『さむい』という単語すらも翌日には忘れています」
典型的なイギリスの労働者階級だというダニエルさんの様子を愛おしそうに語ってくれる久美子さん。国際結婚という冒険を成し遂げたのは彼女だけではない。地元で保守的な生活を送ってきたダニエルさんにとっても、外国人女性との結婚は一世一代の挑戦だったはずだ。そして、唯一無二の友にしてしゃべり相手を得ることができた。自分の習慣やこだわりを捨てる勇気こそが結婚の必要条件なのかもしれない。
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