日本人が「GAFA人材に勝てない」メンタル5大問題 グーグル日本元社長「日本人にも絶対にできる」

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会議中も、わからないことが出たり、データが必要になったとき、外にいる詳しい人にチャットでどんどん質問します。すると、すぐに知見やデータを送ってくれるので、会議が中断されることなく続けられます。仕事全体のクオリティーをあげるために、サービス精神を上手に発揮しようというメンタリティーもありますね。

「上が決定する」対「現場の決定を上がサポートする」

また、グーグルでは、1時間の会議をやれば、必ずアクションと責任者、そして、いつまでにやるのかという結論を出します。議事録は、クラウド上にあり、権限をオープンにしていれば、興味のある誰もが閲覧できますから、スタンプラリー(稟議を回すこと)の必要もありません。

意思決定者はつねに現場の担当者です。現場の1人ひとりが意思決定者であり、その人が決めたことについて、上層部は追認し、どうすればより良くなるか、知恵を持ち寄って話し合い、サポートするのです。現場への権限移譲が進んでいることも仕事の速さの理由です。

何かアイデアを提案すると、みんなが面白がって、ポジティブなフィードバックをくれるカルチャーもあります。

日本の会議の場合、偉い人が集まる会議でプレゼンすると、「そんなもの売れるのか?」とか「失敗したらどう責任をとるつもりだ?」などとさまざまな難癖をつけられたり、否定されたりしがちですよね。やってみればうまくいくかもしれなかったことも、企画段階で潰されてしまうわけです。

こういった話をすると、「それは、グーグルが優秀なエリート集団だからできるのでは?」と反論されることがあります。たしかに、グーグルが優秀な人材を集めていることは、間違いありません。しかし、そのような反論は、最初から「だから自分にはできません」と言い訳を言っているようなものではないでしょうか。

そのような場合、私は、「いえいえ、グーグルでもできるのだから、あなたにも、あなたの会社にもできるのではないですか」とお応えするようにしています。

グーグルも人間の集合体です。そして、他の会社も、さまざまな才能を持った人たちが集まっているわけです。経営者が本気で仕掛けたり仕向けたりすれば、もっといろんなことができるようになるはずです。

グーグルは、情報開示を積極的に行っている企業です。その中には、自社の意識改革や企業改革のためのヒントがたくさんあります。そこから学ぼうとすることは、とてもいいアイデアだと思います。日本企業の奮起を期待したいと思います。

(構成:泉美木蘭)

辻野 晃一郎 アレックス社長/グーグル日本法人元社長

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つじの こういちろう / Kouichiro Tsujino

1957年福岡県生まれ。1984年慶応義塾大学大学院工学研究科修了、ソニー入社。1988年カリフォルニア工科大学大学院電気工学科修了。VAIO、デジタルTVなどの事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2003年ソニー退社。翌年、グーグルに入社し、日本法人社長に就任。2010年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。

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