日本人が「GAFA人材に勝てない」メンタル5大問題 グーグル日本元社長「日本人にも絶対にできる」
しかし、今の時代、そのようなスタイルでは、世の中はおろか、社内の風向きすら、あっという間に読み取れなくなってしまいます。
「不正には目をつむる」対「不正は許さない」
グーグルでは、「Project Maven」というアメリカ国防総省の軍事プロジェクトに協力しようとして、社員が反発し、何千人もが会社を糾弾する声明文にサインし、強硬派は退社するなどして、プロジェクトへの参加が中断されるという出来事がありました。
インターネットによって、弱者の声や、名もない人の声も、聞こえる時代になりました。「Wisdom of the crowds(群衆の叡智)」は民主主義の根底を支える重要な概念ですが、インターネット時代のキーワードでもあります。われわれ1人ひとりには、さまざまな知恵や意見があり、それらをなるべくたくさん集めれば、よりよい意思決定ができるようになるはずです。
台湾の政治にデジタルの力を生かしているオードリー・タンのやり方も、まさにそうです。いろいろなデジタルプラットフォームを作り、政府内の縦割りを解消する手段に使ったり、市民の声を拾って政策に活かしたりといったことを活発にしています。幅広い知恵を集めて、足し合わせ、さらに良いソリューションに昇華させていくことが、デジタル時代の基本スタンスであるべきでしょう。
グーグルにはWisdom of the crowdsが機能する社内文化があり、不祥事防止にも役立っていました。社内で何か良からぬことが見つかると、従業員たちが1人ひとりの正義感や倫理観を大切に「これは何かおかしくないか?」と騒ぎ出します。
先ほどの、軍事関係のプロジェクトの中断もそうですが、例えば、私がいたときにも、日本のマーケティング担当者が、新しくローンチするサービスに対して、インフルエンサーに見返りを渡して肯定的な記事を書かせるという出来事がありました。
グーグルでは、このような「やらせ」はポリシーで禁止されています。この時にも、たちどころに現場から自浄作用が機能して、最終的には本社とも密に連携して問題解決や再発防止に向けて動きましたが、仮にトップからの指示であっても、おかしなことには多くの人が声を上げます。
グーグルでは「Don’t be evil(邪悪になるな)」という言葉もよく使われていました。東芝の不正会計事件や、財務省の公文書改ざん事件のようなことは起きにくいカルチャーだったといえます。もし、財務省でもグーグルのような自浄作用が機能していれば、多くの職員が「公文書改ざんなんて犯罪に手を貸すことはできません!」と毅然として騒ぎ出し、あのような不正が公然と行われることはなかったでしょう。
しかし、だからと言って、裏で、本当に悪いことは一切やっていないかどうかはわりません。ネットの世界でもリアルの世界でも、人の見ていないところで悪いことをする人はいるわけで、完全には防げないものです。しかし、非常に倫理意識の高い企業ではあったと思います。
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