イタリア鉄道、「パリ直通」に込めた仏進出の野望 飛行機や他社との勝負ではない「本当の狙い」
2021年12月18日、午前6時過ぎのミラノ中央駅4番線ホーム。冬場のヨーロッパは日が短く、まだ空は真っ暗の中、発車準備を進めるイタリアの高速列車「フレッチャロッサ」。普段ならそれほど人が多くない時間帯だが、この日は大勢の報道陣が集まっていた。
このフレッチャロッサの行き先は、イタリアの首都ローマでもなければ、ヴェネツィアやナポリでもない。ホームに設置された電光掲示板には「PARIS GDL(Gare de Lyon、パリ・リヨン駅)」の文字が光る。行き先は国境を越えたフランスの首都、パリだ。イタリア鉄道が長年にわたって計画を進め、コロナ禍による計画延期など数々の困難を乗り越え、この日ついにその悲願が達成されたのだ。
パリまでは約7時間
6時25分、列車は定刻にミラノ中央駅を発車した。筆者が乗車した2等車はほとんど乗客がなく、いささか寂しい印象を受けたが、実は直前にウェブサイトで予約状況を確認すると全席売り切れとなっていたので、おそらく途中から乗客が乗ってくるだろう。
終点のパリ・リヨン駅に到着するのは6時間57分後の13時22分。所要時間は列車のよってばらつきがあり、6時間32分で走る列車もあるが、それでも6時間を超える長旅になる。乗り通す乗客はそれほど多くないと考えるのが普通だろう。
列車は暗闇の中、高速新線へと入り時速300kmでトリノを目指す。凍てついて架線に付着した霜をパンタグラフがそぎ落とし、外はその激しいスパークで、電灯をともしたかのごとく青白く照らし出されている。トリノには定刻に到着。乗車する客はわずかで、空席が目立つまますぐに発車した。
車内ではテレビ各局が車内の様子を取材して回っており、筆者もイタリア国営放送(RAI)の逆取材を受けた。イタリア在住の友人に聞いたところ、その様子は夕方のニュースで放映されたらしい。
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