イタリア鉄道、「パリ直通」に込めた仏進出の野望 飛行機や他社との勝負ではない「本当の狙い」

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イタリア鉄道は、地元の高速列車市場で新興勢力「イタロ」の進出を許して苦しめられたが、イタロを運行するNTV社の株主にフランス国鉄が名を連ねていた因縁もあって、フランスへの進出には並々ならぬ思いがあったことは間違いない。もともとミラノ―パリ間にはTGVが走っており、イタリア鉄道はその運行に協力していたが、イタロの一件で袂を分かった。

そのTGVは現在も運行されており、つまりイタリア―フランス間でフレッチャロッサと競合する立場となったが、フレッチャロッサとは少々異なる運行形態となっている点も見逃せない。リヨンを経由せずシャンベリーへ直接向かう点、イタリア国内では在来線を経由し、高速新線を通過しない点だ。

ライバルのTGVと並ぶフレッチャロッサ(撮影:橋爪智之)

リヨンを経由しないためシャンベリーまでは分があるが、イタリア国内で在来線を通るため所要時間は7時間と、フレッチャロッサとあまり変わらない。在来線経由なのは、現在イタリア方面へ使用しているTGV-R型がイタリア国内の高速新線に対応していないためだ。フランス国鉄が本気で勝負する気があるなら、最新の基準を満たした車両であるEuroDuplex(ユーロデュプレックス)を導入する必要がある。

新トンネル開通が発展の条件

ではイタリア―フランス間は、もとより航空機に対して勝負にならないと諦めているのだろうか。現在、トリノ―リヨン間ではインフラの整備計画が推進されており、その1つに両国間の峠を越える「新フレジュストンネル」の建設が進んでいる。

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この新しいトンネルは最高速度220kmで設計され、両国間を直通する旅客・貨物列車とも大幅なスピードアップが期待されているが、建設予定地での反対運動でデモ隊と警察の間で小競り合いが発生するなど大きな問題となっており、建設は大幅に遅れている。また、トンネル前後の路線についても整備が遅れており、全体の計画が完了する時期は未定となっている。

イタリア鉄道は、トリノ―リヨン間に需要があるとしており、今後もこの区間を重点的に整備していきたいと考えているが、そのためにはトンネル開通と路線の高規格化が必須条件であると言えよう。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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