イタリア鉄道、「パリ直通」に込めた仏進出の野望 飛行機や他社との勝負ではない「本当の狙い」

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リヨンでは再び時間調整で20分停車した後、パリへ向けて発車した。リヨンからはフランスの報道陣も乗り込み、車内でインタビューを行っている。列車は高速線のLGV南東線へと入り、パリまでノンストップで走り切る。

パリの主要ターミナルの1つ、パリ・リヨン駅。リヨン、マルセイユ、ニース方面や、イタリア、スイス、スペイン方面の列車が発着する(撮影:橋爪智之)

フランスには他国の高速列車としてドイツのICEとスペインのAVEがすでに乗り入れを果たしているが、1981年にヨーロッパ初の高速専用線として開業したLGV南東線に乗り入れるのはフレッチャロッサが初めてだ。この日、まさに歴史的瞬間に立ち会えたかと思うと感慨もひとしおである。フランス中部の丘陵地帯を猛スピードで駆け抜けたフレッチャロッサは、13時22分定刻にパリ・リヨン駅へ滑り込んだ。

フランス直通列車の狙い

上々の滑り出しに見えたフレッチャロッサのパリ乗り入れだが、課題が多いことは明白だ。

まず、所要時間があまりに長過ぎる。ミラノ―パリ間は飛行機を利用すれば1時間30分、列車の4分の1以下だ。空港までの所要時間とチェックイン時間を考慮しても、手も足も出ない。運行本数も1日2往復のみでまったく勝負にならない。

それではなぜ、イタリア鉄道はわざわざフランス直通列車の運行を開始したのか。イタリア鉄道はミラノ―パリ間の直通列車を重要な位置付けとしながらも、それで競合交通機関と勝負することはもともと考えていない。

イタリア鉄道には、まず列車を走らせることでフランスに確かな基盤を築きたいとの考えがあった。同社は中長期計画において、パリ―ニース間やパリ―ボルドー間などフランス国内での列車運行を計画しており、最終的にはパリ―ブリュッセル間の運行も視野に入れている。その基盤作りのために、まずはフランスへ乗り入れることが必要不可欠だった。

同社はまた、フランス国内の需要にも期待している。初日の列車は、ミラノ―シャンベリー間の予約状況は決して芳しいものとは言えなかったが、リヨン―パリ間についてはほぼ満席という上々の滑り出しだった。もちろん記念乗車の需要もあっただろうが、もともと同区間は需要が旺盛で、フランス国鉄が運行するTGVの牙城に割って入る算段があるのだろう。フランス国鉄もそれを警戒して鉄道版LCCの「OUIGO(ウィゴー)」を運行するなど、以前からイタリア鉄道を迎え撃つ対抗策を打ってきた。

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