「ジャパン・クライシス」が迫っている アベノミクスには出口がない!

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小林:先ほど橋爪先生が言われたように、どのようにして「出口」へ辿り着くかという構造的な問題と、直近の問題にどう対処するかという対症療法とが関連づけられていない。しかも、今のところ対症療法がうまく行っているため、構造的かつ長期的な問題から、かえって国民の目をそらす結果となっています。

橋爪:その対症療法も、賞味期限切れではないでしょうか。

消費が伸び悩んでいます。消費税率を8%に引き上げたせいよりも、根本的には、財政再建策がはっきりせず、日本経済の先行きが不透明だからです。アベノミクスへの信任もぐらつき始めている。安倍政権の予想以上に急速な円安が進んでしまった。円安なら物価も上昇するわけで、食料品や工業原材料が軒並み値上がりしています。輸出が振るわない国内産業には打撃ですし、物価の上昇分は実質的な所得減となり、景気の足を引っ張ってしまう。

進む、企業の海外移転

小林:今年に入ってからの安倍政権には、二つの誤算があります。

ひとつは、円安によって企業の輸出がもっと増えるだろうと考えていたわけですが、予想に反してそうならなかった。想像以上に、企業の海外移転が進んでしまった。輸出が増えるためには、まず、海外移転した企業が日本に帰ってこないといけない。しかし、企業が帰ってくるまでには、数年以上の時間がかかってしまう。

もうひとつは、円安による物価上昇が始まっているのに、賃上げがそれに追いついていない。周知のように安倍政権は、企業に対して賃上げをするよう要請していますが、企業経営者からすれば、財政問題などの懸念材料があるため、賃上げをするとか、新規事業のための設備投資をするとかいった判断ができない状況です。

その意味でも財政問題が遠因になって、景気回復の足が引っ張られていると言えるでしょうね。

橋爪:最近の現象として、消費の二極化が起こっています。デフレこのかた、価格の安い商品に人びとが流れていたわけですが、このところ、一部の高額商品が売れるようになった。これは高所得層が、株や不動産の含み益が出たおかげで、消費行動を変化させた結果です。アベノミクスの効果が、こうしたかたちで表れている。

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