「奇界遺産」佐藤健寿が現在に至った偶然と必然 子ども時代に観たオカルト番組が興味の根源
でも今、同じことやれば、FacebookなどのSNSで作業員の身元も一発でわかるし、嘘が簡単にバレてしまうんですね。そうやって嘘を暴こうと“デバンキング”する人たちがいっぱい増えて、昔のやり方が通用しなくなってしまった。同時にCG技術も発達して、リアルなUFOの映像を見たら、みんなまず「CGだ」って思ってしまう。リアリティの概念が変わってしまったというのも、背景にあると思います。
伝説を楽しむことより、デバンキングが勝ってしまっている
──今は伝説を楽しむということより、デバンキングが勝ってしまっているんですね。
佐藤:日本やアメリカはとくにそうだと思います。でも一方で、例えばインドの各地で「サイ・ババってどう思う?」※って聞いてみたら、誰1人として「あれは嘘つきだよ」みたいに否定する人はいなかった。懐疑的にみれば「(超能力を使って)超越的な神様だってアピールをしてる」って捉えるんですが、インドではそもそもサイ・ババは神様であるという前提は揺らがなくて「神様だからそういうことができてもおかしくない」と思うって言うんですね。ういう環境による認識の違いはすごく面白いと思いましたね。
※サイ・ババは世界中に信者をもつインドの宗教指導者。常識を超えた超能力を持つとして日本でも大きな話題になったが、その後イカサマだと叩かれることに。しかしインドでの名声は揺るぎなく、死後は国葬にされた。
──最後に新しい写真集「世界 MICROCOSM」について、こちらは「奇界遺産」とはまったくテイストの違う写真集ですが、出版した経緯を含めて教えてください。
佐藤:自分の旅は、実は目的地へ行くまでの過程の方が遥かに長いんです。たとえば、宇宙ロケットを撮影したカザフスタンの「バイコヌール」も、行くまでに20時間、ロケットが飛び立つまで1週間の滞在時間がありました。その間もずっと写真は撮っている。
でも本にするのは、その中の一瞬のハイライトだけなので、「奇界遺産」が自分の旅すべてかと言われるとそうでない。だから、それ以外の写真も見てほしいと思って作りました。20年間かけてニュートラルに見てきた世界はこんな感じ、って伝えられる本ができあがったと思っています。
(文/井上真規子 写真/椙本裕子)
1978年生まれ。写真家。写真集「奇界遺産」「奇界遺産2」「奇界遺産3」(エクスナレッジ)が異例のベストセラーに。TBS系列『クレイジージャーニー』、NHKラジオ第1『ラジオアドベンチャー奇界遺産』、テレビ朝日『タモリ倶楽部』、NHK『ニッポンのジレンマ』ほか、テレビ・ラジオ・雑誌への出演多数。
HP/奇界 | 奇界遺産・佐藤健寿 公式サイト (kikai.org)
Instagram/Kenji Sato 佐藤健寿(@x51) • Instagram写真と動画
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