「奇界遺産」佐藤健寿が現在に至った偶然と必然 子ども時代に観たオカルト番組が興味の根源

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結果的に、その写真は世界的なリアクションを貰うことになって。Flickr(フリッカー)というInstagramの先駆けのような画像共有サービスに写真をアップしてみたら、「エリア 51」のWikipediaの項目で使わせて欲しいという問い合わせをもらったりして。友人にも、面白がってもらえて、これは楽しいぞと。

シンプルにわかりやすく、ニュートラルな視線で撮影することを心がけた

──そこから、佐藤さんの不思議な写真を撮影する旅が始まったわけですね。

佐藤:オカルトや超常現象のような不思議なテーマのものって、その道の研究者が適当に撮った写真はあっても、プロのフォトグラファーが丁寧に撮ったものはほとんどなくて。それに気づいてからは、南米のナスカに行ってみようとか、ヒマラヤの雪男ってなんだったんだろう? と、実際そこに向かってみたり。そんなことをやっているうちに今に至るという感じです。

──丁寧に撮影するというは、どういうことですか?

佐藤:被写体自体が「何コレ?」というものが多かったので、できる限りシンプルに分かりやすく、ニュートラルな視線で撮影することを心がけました。単なる報道写真にはしたくなくて、でもアート写真にするのも違うな、とか。そういう想いの間で揺れた結果、今の写真にたどりつきました。

──そうした旅先での写真を撮り溜めて完成したのが「奇界遺産」というわけですね。

佐藤:「エリア51」や「ヒマラヤの雪男」もそうですが、そういう奇妙なモノをたくさん撮影していくうちに、出版社から“本にしないか”というオファーをもらったんです。一度は話が流れたのですが、声をかけてくれた編集者と数年後に会ったら、その人が出版社内でだいぶ出世していて(笑)。もしかしたら予算をかけて写真集を作れるかもと思い、今度は自分から声を掛けてみたんです。そうして完成したのが「奇界遺産」です。

──発売するや大ヒットになり、重版までかかりました。そこまでの反響は予想されていましたか?

佐藤:売れることはまったく予想してなかったですね。自分ががこういう本が欲しいと思ってその思いだけで出版した本なので(笑)。

──非常に立派な本になりましたが、作るうえでのこだわりとかはありましたか?

佐藤:こだわりは、もともと子どもの頃から図鑑が好きだったこともあり、当時(2010年)としては珍しい図鑑っぽい写真集に仕上げてもらいました。あとは子ども時代に「ぐちゃぐちゃで不思議な世界」が広がっていくような本が欲しかったのを思い出して、UFOや雪男、中国の洞窟とか本来交わらないものをあえて並置したり。子ども時代の想いを具現化しました。

──現在「奇界遺産」はシリーズ3まで発売中です。いままで何カ国くらい旅をされてきたんですか? 日本にほとんどいないイメージがあります(笑)。

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