消費者物価指数から読み解く「数字の裏側」超基本 インフレと金融政策を日銀総裁の会見に学ぶ

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旺盛な需要に供給が追い付かずに物価が上昇し、賃金も上昇する。賃金が上昇するので家計の消費が増え、企業の売り上げが伸び、さらに賃金が……。という好循環の中で物価が上昇しているのではなく、現在はあくまでエネルギー価格が全体を押し上げているだけであり、賃金が上がらないままに物価だけが上昇すると、それは結果的に消費を冷やし需要を減退させるため、物価上昇が一時的なものにとどまる。

それゆえに、好循環下における2%の「物価安定の目標」の達成をするまでは金融緩和を続けるということだ。ちなみに、需給ギャップはGDPギャップとも呼ばれるが、下図が内閣府の発表している需給ギャップの推移である。

為替と物価の関係

経済指標と同様にニュース番組や新聞でよく目にするのが為替相場だ。実はこれも数字の変化だけを見てもよくわからないだろう。昨日よりいくら円高になったと言われても、これもまた「へぇ」とだけ思っておしまい、ということになる。為替相場がどのように経済に影響を与えるのかについても会見要旨から学んでいこう。

為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移するということがきわめて重要であると思っています。そのうえで一般論として申し上げますと、為替相場の変動というものは、財・サービスの輸出の数量、輸出採算や海外事業の収益、そして輸入原材料のコストなど、様々なルートを通じてわが国の経済に影響を及ぼします。

これらの影響は、わが国の経済・貿易構造の変化に伴って変化しているわけですが、為替円安が全体として経済と物価をともに押し上げて、わが国経済にプラスに作用しているという基本的な構図に今のところ変化はないと考えています。従って、悪い円安ということは考えていません。ただ、為替円安の影響が、業種や企業規模、あるいは経済主体によって不均一であるということには十分留意しておく必要があると思っています。
(出所)日本銀行「総裁記者会見要旨」

ここからわかることは為替相場が貿易や物価などに影響を与えることで、企業業績や家計にも影響を与えるということだ。具体的にいえば、円安になると輸出競争力が高まり輸出企業には追い風となるが、原材料を海外から輸入する場合は輸入価格が高くなり、コストも高くなることで家計の負担も上昇するということである。

とはいえ、単純に円安傾向だから輸出企業の株へ投資をすればいいとはならない。実際には為替については予約をしたりヘッジ取引をしていたり、そもそも生産工場を海外に持っているケースもあるからだ。

経済指標や株価、為替相場などを表示されている数字だけ見たり、ある時点と比較して上下したという認識で終わるのではなく、その数字たちが経済のあらゆる部分にどのような影響を与え、それが全体にどのように波及していくのかという流れの中でデータを見る能力を身につけていきたいものだ。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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