消費者物価指数から読み解く「数字の裏側」超基本 インフレと金融政策を日銀総裁の会見に学ぶ

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それでは、早速内容を見ていこう。現在の物価についての認識と今後の見通しについては以下のように述べている。

物価ですが、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、小幅のプラスとなっています。また、予想物価上昇率は、緩やかに上昇しています。先行きについては、消費者物価の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと予想しています。
(出所)日本銀行「総裁記者会見要旨」

「携帯電話通信料の引き下げ」に言及

エネルギー価格の上昇が全体を牽引しているということは前述のまとめのとおりだが、気になるのは「携帯電話通信料の引き下げ」について言及していることだ。

菅義偉政権時に携帯電話の通信量が大幅に引き下げられ、その後も断続的に引き下げられたことから、消費者物価指数の内訳をみてみると「通信料(携帯電話)」は前年同月比−53.6%と大幅なマイナスを記録しており、全体を1.48ポイントも下押しているのだ。つまり、この特殊要因がなければ、日本の消費者物価指数はすでに前年同月比で2%近くまで上昇していることになる。

冒頭で知人が経済指標の結果だけを見ていてもよくわからないという話をしていたと紹介したが、引用したこの部分だけからも、発表された経済指標の結果を基に日銀総裁が現在をどのように認識していて、将来をどのように見通しているのかがわかるだけでなく、消費者物価指数を見る際は内訳の品目まで見ることの重要性を学ぶことができるのだ。

物価が日本でも上昇していく見通しであり、携帯電話の通信料という特殊要因を除けばすでに前年同月比で2%の上昇となっているのであれば、金融緩和をやめて政策金利を引き上げていくと考えるかもしれないが、その点についてはこのように述べている。

景気が拡大し、あるいは需給ギャップがプラスに転化していく中で、賃金・物価が上昇していくという好循環のもとでの2%の「物価安定の目標」の達成を目指しており、そのようになるように、必要な金融緩和を粘り強く続けていくつもりです。
(出所)日本銀行「総裁記者会見要旨」
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