中国のエネルギー海運大手の中遠海運能源運輸(コスコ・シッピング・エナジー・トランスポーテーション、漢字の略称は中遠海能)は1月22日、2021年の通期純損益が過去最大の49億2000万~51億2000万元(約882億~917億円)の赤字になるとの業績予想を発表した。
上海証券取引所に上場する同社の株式は、発表後の最初の営業日となった1月24日の取引開始と同時に売りが殺到。株価はストップ安となり、取引が再開された後場の終値は前営業日比9.91%安の5.09元(約91.2円)で引けた。
注目すべきなのは、赤字の原因は本業ではなく、保有するタンカーの資産価値を一括して減損処理するためであることだ。中遠海能は国有海運最大手の中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)の傘下にあり、現時点で141隻を保有する世界最大のタンカー船主である。今回の発表によれば、同社はそのうち94隻について、総額約49億6000万元(約889億円)の減損引当金を2021年決算に計上する。
なお、減損処理の影響を除いた本業の業績も好調とは言えず、辛うじて収支均衡を保っている状況だ。その理由について同社は、「新型コロナウイルス流行の長期化によりグローバルな経済活動が停滞し、石油の需要が抑制された」ためだと説明している。
巨額減損の根拠に疑問の声も
「2021年は過去約30年間で最も厳しい1年だった。(荷主から受け取る)用船料がタンカーの運航コストを下回る状態が年間の半分以上に達し、VLCC(超大型タンカー)では1日当たりの赤字額が2万ドル(約227万円)を超えた」。財新記者の取材の応じた関係者は、石油タンカー業界の苦況をそう証言した。
タンカー運賃の大幅な下落は、中遠海能が巨額の減損処理に踏み切るにあたり最も重要な根拠となった。
イギリスの海事コンサルティング会社のドゥルーリーは、石油タンカーのスポット運賃の収益レベルを予測し、海運会社にデータを提供している。中遠海能はそのデータを船舶資産の減損テストのパラメーターとして採用しており、ドゥルーリーが将来の予測値を大きく引き下げたことを理由に、今回の減損処理が必要になったと説明している。
だが、減損処理の大きさやタイミングについては、投資家から疑問の声も上がっている。上海証券取引所は、減損額の算定の具体的なプロセスやパラメーターの選択根拠をより詳しく(投資家に対して)説明し、巨額減損の合理性を論証するよう中遠海能に求めた。
同取引所はさらに、過去の減損処理が同業他者に比べて不十分だったり、遅れたりしてはいなかったか、実態を説明することも求めている。
(財新記者:賈天琼)
※原文の配信は1月24日
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