第2・3回の宣言でも、宣言の解除から経済活動が回復するタイミングで、自殺者数が増えた。
もちろん、第4回宣言はこの限りではない。自殺数と経済活動の厳密な相関関係を示すには、もっとずっと難しい統計学的解析が必要だ。自殺の要因には、人間関係や学校・仕事問題など、さまざまな要因が絡み合っている。
それでも、経済回復期は、複雑な人間心理がメンタルヘルスに影響を与えやすい、実は非常に繊細な局面なのだ、という認識は持っておいたほうがいい。
以上、前回の記事【医師が警鐘「ステイホームによる健康被害は深刻」】の話も併せると、行動制限に慎重であるべきなのは、単に人権や経済だけが理由ではないとおわかりいただけると思う。
解除後の経済・社会の回復期になって噴出する「からだ」と「こころ」への影響――そこまで見越して、なお制限に踏み切るのかどうかだ。
もっと言えば、おそらくポスト・コロナの数年間は、否応なく同様の「からだ」と「こころ」の健康問題に直面することとなる。さらにくっきりと明暗が分かれるだろう。
患者目線のオンライン医療整備を
新型コロナは依然、世界中で猛威を振るっている。ただ、感染性が高く毒性の低いオミクロン株の出現は、「ゼロコロナ」政策の限界を突きつけ、「withコロナ」容認を後押しした。早々に行動規制の緩和に踏み切る国が続出している。
諸外国の関心はすでに「対コロナ全集中」から「いかに日常を取り戻すか」へ、加速度的にシフトし始めているのだ。日本も判断を迫られている。
来るべきポスト・コロナ社会に向けて、医療はどう備えるべきか。
まずは診療や検査のオンライン化を徹底し、患者さんにとって利用しやすいものにしておくことだ。
例えば生活習慣病は、服薬や食事・運動の適切な管理によって状態を維持・改善できるが、放置してしまえば自覚症状のないままに進行する。そのため、いかに健診・検査を受け、診療や指導を継続してもらえるかが非常に大事だ。
また、「こころ」の不調は「からだ」の不調とは違い、定期健診などの早期発見手段や、血液検査値など目に見える指標がない。そのうちに「こころ」がすっかり疲弊して「からだ」も言うことを聞かなくなり、生活が立ち行かない状況に陥ってしまう。
オンライン診療・検査なら、移動や待ち時間の制約を伴わない分、利用へのハードルが低い。体調不良や多忙の際にも受診を諦めずに済むし、潜在患者もすくい上げやすい。
現在、厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催し、体制の整備を進めている。安全性を担保するごく最低限の制約は必要だが、「ハードルの低さ」という大きなメリットが損なわれてしまっては本末転倒だ。
「からだ」の不調でも「こころ」の不調でも、症状が軽かったり単に不安だったりしたときでも、たとえかかりつけ医でなくとも、誰もが初診から利用しやすいオンライン医療へ。さらなる診療報酬改定や法整備等を含め、ぜひ患者さん目線で議論していただきたい。
新型コロナを機に仕事の仕方やライフスタイルが大きく変わる中、医療も転換期を迎えている。オンライン医療が、「からだ」と「こころ」の健康に悩むすべての人のセーフティーネットになれたらと思う。
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