映画「999」がドルビーシネマ版で蘇った深い理由 海外展開にはアーカイブのリマスター化が不可欠

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物語の舞台は、機械の身体に変えることで人間が永遠の命を手にすることができる未来。銀河鉄道999に乗れば、機械の身体を手に入れることができるといううわさを聞きつけた星野鉄郎は、謎の美女メーテルから999号のパスをもらい、メーテルとともに宇宙の旅に向かう――。

これまでのHDリマスター(左)と4K HDRリマスター(右)の画像比較。当時のアニメスタッフの表現力がよみがえる。4Kリマスター版のBlu-rayは、5月11日に発売予定 ©松本零士・東映アニメーション

今回のドルビーシネマ版では、クッキリとした暗闇で描写される宇宙空間、そしてりんたろう監督ならではの「透過光」を使った演出などが堪能できるほか、キャラクターの色合い、フィルムが本来持っていた美術・背景の細部、暗くて視認できなかったシーンなどがよみがえっている。

『銀河鉄道999』を手がけた東映アニメーション(製作当時は東映動画)が、過去の作品を4K(3840×2160の解像度)リマスター化するプロジェクトをスタートさせたのは2017年のこと。日本アニメーション100周年を記念して、同社初の劇場用長編アニメ『白蛇伝』を4Kリマスター化しないか、という国立映画アーカイブからの提案がきっかけとなり、国立映画アーカイブ、東映、東映アニメーションの3社によるプロジェクトが立ち上がった。

修復作業の際、『白蛇伝』のネガフィルムは劣化が進んでいたというが、4Kスキャンを行い、ノイズの消去や色の調整などを行った。レストア(修復)された『白蛇伝』4Kリマスター版は、カンヌ国際映画祭カンヌ・クラシック部門で正式上映された。

海外で求められるリマスター版映像

『白蛇伝』は、東映動画をモデルにしたNHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」で、主人公たちが手がけたアニメ作品のモデルになった。同社のアーカイブ事業を担当する映像事業部の近藤修治映像管理室長は「当時は『なつぞら』の影響もあって、弊社の過去作の需要が高まっていた」と振り返る。1948年の創業以来、東映アニメーションでは250本以上におよぶ劇映画を製作してきた。さらにテレビシリーズも200タイトル以上、話数にすると1万3000話を超える。これらの作品群は、まさに日本のアニメーション史における文化遺産ともいうべき価値をもたらしている。

『さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅-』のワンシーン ©松本零士・東映アニメーション

海外展開のうえでもアーカイブの活用が欠かせない。同社は1975年から海外販売を進めており、特に松本零士作品はヨーロッパをはじめとした海外での人気も非常に高い。そのため、動画配信サービスをはじめとした海外からの問い合わせもしばしばで、過去作品のデジタル化および、リマスタリング作業は東映アニメーションとしても、やらなくてはならない事業だった。

『銀河鉄道999』に限らず、東映アニメーションが誇る過去作のライブラリーは、Blu-rayソフトの普及などに合わせて、HDリマスター(1920×1080の解像度)化の作業が順次進められてきたが、近年はフィルムやテープといったアナログ素材のアーカイブ化も急務となっている。特に近年は、4Kリマスター化のニーズが高まっており、その流れで『少年猿飛佐助』『空飛ぶゆうれい船』『ホルスの大冒険』、『劇場版マジンガーZ』シリーズなど、『白蛇伝』以降のタイトルを次々と4Kリマスター化。そして満を持して『銀河鉄道999』に取りかかることになった。

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