衣装に「受けよう検診」、リングに立つ彼女の正体 女医の彼女が30歳でプロボクサーになった理由
取材を受ける機会も増えて、結果的に医師として伝えたい自分の思いを“病院の外にいる人”にまで広く届けられるようになった実感があって。
実は、私が産婦人科医を志したのは、「検診の重要性」や「女性の体についての正しい知識」を世の中に啓蒙していきたいと思ったからだったんです。
うちは父も母も医療に関わる仕事をしていたので、私にとって医療の道を目指すこと自体は自然なことでした。
産婦人科医を志したきっかけは1人の患者さん
そこから産婦人科の分野を選んだのは、研修医として産婦人科で働いていたときに知った、1人の患者さんの存在がきっかけです。
彼女は当時、私と同じ20代にもかかわらず、子宮頸がんが全身に転移していて末期状態。婦人科の定期検診を受けたことはなく、気づいたときには体調が悪化し、余命幾ばくもないことを宣告されました。
私自身は生理痛が重かったので、子宮頸がん検診の対象となる20歳から定期的に検診を受けていたのですが、もしも生理痛がない体質だったら「検診を受けよう」と思っていなかったかもしれません。
末期状態の彼女も知識さえあれば、定期検診にさえ行っていれば、違う未来があったのかもしれない。もっと言えば、HPVワクチン(※)を打っていれば、子宮頸がんにはならなかった可能性が高い。
※HPVワクチン:子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチン
そんな現実を目の当たりにして、「産婦人科医になって女性たちに正しい知識を伝えたい」と思ったんです。
ただ、産婦人科で働いていた20代の頃は、仕事が忙しすぎて目の前の妊産婦の方や患者さんに対応するのでいっぱいいっぱいになってしまって……。もともとやりたかった知識の啓蒙を行うところまで頭が回りませんでした。
そんな中で、自分がなぜ産婦人科医になったのか、もともとやりたかったことは何だったのか、初心を思い出すきっかけを与えてくれたのが、ボクシングだったんです。