オミクロンで混迷の日本、「国民軽視」の根本問題 時代遅れの感染症法「強制入院規定」が元凶だ

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日本は対照的だ。確かに、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、「体外診断用医薬品」として50種類の検査キットを承認している。ただ、このような診断キットは、薬局で薬剤師が対面販売しなければならない。非接触とは程遠い。さらに、万が一、陽性になった場合、当事者の意向とは無関係に、強制入院させられてしまう。

日本は世界から学ばなければならない

われわれは、もっと世界から学ぶ必要がある。欧米は、検査をフル活用し、オミクロン株の流行下でも社会活動を継続している。1月12日、アメリカのバイデン大統領は、対面授業を継続させるために、学校向けに配付する検査キットを毎月1000万回分追加すると発表しているし、英国政府は、1月17日、コロナ感染後の自主隔離を、検査陰性の場合に限り、従来の7日から5日間に短縮した。1月20日、イスラエルではコロナ感染者と接触した小児は、週2回、抗原検査を受け、陰性を確認するという条件つきで、隔離を中止した。

繰り返すが、わが国のコロナ対策の基本的姿勢は間違っている。最優先すべきは国家の防疫ではない。「検査を受けたい」「治療を受けたい」「家族にうつしたくない」などの国民の希望に応えることだ。このために、世界中で在宅検査、オンライン診療、隔離施設が整備された。厚労省や日本医師会が、このようなシステムを強く求めたという話を寡聞にして知らない。この結果、日本はコロナ診療体制で大きく出遅れてしまった。

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岸田文雄首相は早急に感染症法を改正すべきだ。その際のポイントは、国家の権限を強化し、民間病院に無理やり感染者を押し付けることではない。検査、治療、さらに隔離を受ける権利などを感染症法で保障することだ。そうすれば、官民を挙げて、研究開発が進む。世界は、国民の健康重視を貫き、2年間でコロナ対策を一変させた。その結果、オミクロン株の流行でも社会規制を要しない「強い」社会を築き上げた。いまこそ、世界から学ばねばならない。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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