感染症法は、コレラや結核を念頭において立法された。毎日数万人の感染者が出るコロナは想定外だ。すべての感染者を診断してしまえば、すぐに病床はいっぱいになる。病床を用意するのは厚労省の責任だ。だからこそ、コロナ流行当初、「PCR検査を増やさないことが、わが国が医療崩壊しない理由」という説明を繰り返した。
ただ、この程度の弥縫策では、コロナ感染者の増加を「抑制」することはできなかった。特に、感染力が強いオミクロン株感染者を入院させれば、院内感染は避けられなかった。沖縄では院内感染が多発し、医療崩壊が危惧された。
この段階で初めて、知事が強制入院の方針を緩和しても、免責されるようになった。ただ、同時に病床が逼迫するため、まん延防止宣言を出すこととなった。これが、日本では少数の感染者で社会が麻痺してしまう理由だ。この構図は、第1波から今回まで基本的に変わらない。
感染症法の強制入院規定こそ、わが国の感染症対策の問題を象徴している。社会の防疫のために隔離を優先し、感染者の検査や治療体制の強化は軽視する。明治時代に内務省衛生警察が所管した伝染病予防法の影響を残している。
政府でなく国民の立場に立てば世界と伍せる
コロナは未知の感染症だ。感染症法の2類や5類のような既知の類型に無理やりあてはめることなく、実情に即し、合理的な対応をとらねばならない。その際、重要なのは、政府でなく、国民の立場に立つことだ。国民の立場に立てば、世界と伍した議論が可能になる。
コロナパンデミックで、世界は非接触を希望した。この結果、在宅検査が急成長した。例えば、昨年3月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、アメリカ・キュアヘルス社が開発した自宅で検査できる簡易核酸検査に緊急使用許可(EUA)を与えた。医師の処方箋が不要で、所用時間は約20分で、PCR検査との陽性一致率は97%だ。
欧米で検査数を増やすことができたのは、このような自宅で簡単に実施できる検査が開発され、オンラインで購入できるようになったからだ。このような検査キットの配送から、医療データとして利用するまでの、社会システムが、この2年間の試行錯誤の末、確立された。だからこそ、バイデン大統領は、昨年12月、全国民に無料で検査を受けることができると宣言することができた。
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