「トイレの空き個室」がわかる新メタバースとは 3D都市モデルを用いて仮想空間内に情報を設置

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しかしSTYLYの手法であれば、スマートフォンやAR/MRグラスというデバイス越しに見なくてはならないというハードルはあるものの、時間を問わず、(現時点においては)土地や建物の権利者に許可を取らずとも自由な展示が可能となる。それこそ空をまるごとジャックして、空一面に映像を表示するといったアプローチも可能だ。

街を散策しているときに欲しくなる情報も表示可能

現実世界でも広告だらけ。さらにあざとい広告を見せられるのか……と感じた方は安心してほしい。行きたい場所までの道をグラフィックでわかりやすく表示してくれるレイヤー、各路地の混み具合など、投影される情報はユーザー側で自由に切り替えられる。ナビゲーション機能も今現在空いていて歩きやすい道を案内すれば、都市の回遊施策にもつながる。足が衰えてしまった老人層向けに、階段がなく勾配がゆるい道を案内するといったコンテンツも考えられる。

5G通信インフラが普及しつつある現在なら、各場所にIoTセンサーを設置してリアルタイムでさまざまな情報を取得できる。それこそデパート内にあるトイレの個室1つひとつの空き情報を外部に発信することも簡単にできるようになった。デパートがこの情報を一般公開してくれれば、その情報をSTYLYに取り込んで今現在空いているトイレ情報も可視化、新たな集客方法として活用できる。

表示内容のレイヤーを切り替えることで、より細かな道の混み具合や、商業施設が一般公開したトイレの空き情報といったデータも見られる(画像:Psychic VR Lab)

STYLYに今後どのようなコンテンツが追加され、人間の知覚拡張をサポートしていくのか。それはSTYLYに参加するクリエイター次第だ。コンテンツを作るためのハードルは低く、プログラミング言語や特別なグラフィックソフトの扱いを知らなくてもクリエイターとして参加できるため、玉石混交ではあるだろうが多くのコンテンツが増えていくことが予想できる。

筆者が実際にARで見てみたいと感じたのが災害時の避難ルート確認だ。グリニッジ大学(イギリス)の火災安全工学グループが開発している、避難モデル解析ソフトbuildingEXODUSで解析したデータを避難する人と同じ目線で見ることができたなら、人間はどういった構造の建築物で迷い、どのように入り組んだ路地で戸惑い、多くの人が逃げていく方向こそ正しいルートだと鵜呑みする追従性などを学ぶことができそうではないか。

武者 良太 フリーライター

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むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

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