春日井製菓の牛乳飴「女王のミルク」開発秘話 41%配合の生クリームが鍋で焦げて「失敗22回」

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鈴木さんは、ほかのチームも一緒になって開発に取り組み、新たな目線やアイデアを生み出すきっかけをつくるべく、職場の座席を固定しないフリーアドレス制度を導入した。さらに、勤務時間の20%、週5日勤務であれば1日を自分の好きな研究に使うことができるチャレンジ制度も新たに定めた。この2つの制度によって、挑戦が奨励される場と空気が醸成されていった。

「他社をはるかにしのぐおいしさのミルクキャンディーをつくってシェアを奪還する!」という思いが商品開発部にあり、チャレンジチーム発足から1年後をメドに新商品を開発して発売するという目標を立てた。

「発売時期がマストだと思って進めていた部分がありました」と話すのは、入社半年後からミルクキャンディーの開発を担当した大原千洸さんだ。新たなミルクキャンディーを開発したものの、このまま発売してもよいのかという迷いもあった。たしかにおいしいミルクキャンディーを作ることができたが、発売時期に間に合わせることを意識するあまり、妥協せざるをえなかった部分もあったのだ。結局、新しいミルクキャンディーの発売は断念した。しかし、この決断こそが開発者たちの魂に火を付けることとなった。

主原料となる乳製品を実際に食べながら探す日々

商品開発には、市場や顧客のニーズに応えるマーケットインと、作り手の作りたいものや作れるものを考えるプロダクトアウトという手法がある。が、ミルクキャンディーのシェアを奪還するには、それらの手法はまったく通じず、開発者たちの情熱、いわば“スピリット・アウト”に望みを託した。チャレンジチームの一員である水上陽介さんはこう振り返る。

「販売を断念したのは、他社よりも頭一つ飛び抜けた商品でなければ、勝つことができないという判断からでした。開発者が思いどおりの原料を使って、思うとおりの味にして、『おいしい!』と言ってもらえる商品を開発しようということになりました」

左から春日井製菓商品開発部の大原千洸さん、部長の鈴木克明さん、水上陽介さん(筆者撮影)

北海道産の練乳と生クリームを使った『ミルクの国』のように、おいしいものがたっぷり入っていることこそが“春日井製菓らしさ”であるとの原点に立ち返った。そして、ミルクキャンディーの原料になりそうな食材、それも最上級のものを取り寄せたり、購入したりしてチャレンジ制度を利用して試食をする日々が続いた。

とはいえ、勤務時間中に高級な食べ物を、しかも、会社のお金を使って食べることにどこか後ろめたさを感じる社員もいた。そこで鈴木さんは、チャレンジチームのメンバーが気兼ねすることなく試食できるように、1日1万円以内であれば自由に使うことができるというルールを定めた。

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