春日井製菓の牛乳飴「女王のミルク」開発秘話 41%配合の生クリームが鍋で焦げて「失敗22回」

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それでも水上さんたちは焦げつかない温度や時間、水分量を割り出してテストをするしかなく、工場のスタッフと何度も話し合った。ときには工場に納入した機械メーカーの技術担当者を呼び、製造が可能なのか相談した。そうして少しずつ苦労が実を結び始めると、いつの間にか、工場のスタッフの不安は希望に変わり、新たなミルクキャンディーの完成を自分のこととして捉えるようになっていった。

生クリームを焦がさない「真空低温濃縮製法」を確立(写真:春日井製菓)

「まさに針穴に糸を通すような作業でした。じっくりと時間をかけて、低温で丁寧に加熱していく“真空低温濃縮製法”という独自製法を確立しました。生クリームを弱火でコトコトと煮込むようなイメージです。今年1月末、商品化へ向けて最後のテストが行われました。失敗したら、発売を延期するしかないという状況の中、無事成功しました。その瞬間、その場に居合わせた方たちから歓声が上がりました。うれしかったですね」(水上さん)

「女王のミルク」の完成でブランド構築の機運が高まる

完成したミルクキャンディーは、高貴な味を連想させる「女王のミルク」と名付けられ、2021年9月に発売された。

個包装されたパッケージを開封すると、雪のように白いキャンディーの粒が顔を出す。この色も丁寧にじっくりと煮詰めた証である。キャンディーを頬張ると、なめらかな口当たりとともに濃厚なミルクの味わいがふんわりとやさしく広がる。「たかがキャンディーで……」と思われるかもしれないが、決して大袈裟な話ではなく、仕事で行き詰まったときに「女王のミルク」を食べると、モヤモヤとした心がリセットされて、豊かな気持ちになれる。

「『女王のミルク』を開発したことで、全社一体となって1つのブランドを育てていくという考え方が社内で根付きはじめました。社員一人ひとりの中にも新しいことに挑戦したいという気持ちが芽生えつつあると思います」と、鈴木さん。

春日井製菓では、開発者の夢が詰まった「女王のミルク」にちなんで、SNS上で「#たった一度でいいから」夢投稿キャンペーンを展開した。誰にも言えなかったけれど、ずっとやりたかった夢を叶えるサポートをするというもの。

これまで「大空を飛んでみたい!」「イルカと泳ぎたい!」「結婚式がしたい!」「屋久杉を見に行きたい!」「演奏会を開きたい!」という5つの夢を実現させた。その様子を収めた動画はウェブサイト上で公開されている。それらを見て、日々の仕事がルーティン気味になっていた筆者も新たな夢に挑戦してみたくなった。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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