春日井製菓の牛乳飴「女王のミルク」開発秘話 41%配合の生クリームが鍋で焦げて「失敗22回」

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2021年9月に発売された春日井製菓「女王のミルク」(右)と1984年発売のロングセラー商品「ミルクの国」(筆者撮影)
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寒い季節に喉を潤したり、仕事や勉強の気分転換をしたりするためにキャンディーをポケットやバッグに忍ばせている人も多いはず。われわれが普段何気なく食べているキャンディーの市場は、800〜900億円と大きく、各メーカーがヒット商品の開発に躍起となっている。中でも、ミルクキャンディーの人気は高く、カンロの「金のミルク 濃い贅沢」やUHA味覚糖の「特濃ミルク8.2」など味の濃さをウリにした商品が続々と登場している。

愛知県在住の筆者にとってミルクキャンディーといえば、名古屋市西区に本社がある老舗菓子メーカー、春日井製菓の「ミルクの国」。1984年に発売されたロングセラー商品だ。

春日井製菓は「グリーン豆」など豆菓子のメーカーと思っている人もいるだろう。1928年に創業し、キャンディーの製造を開始したのが1956年。「グリーン豆」の発売はその17年後の1973年。2020年度の売り上げ165億円のうち半分以上を占めているのがキャンディーであり、主力商品と言っても過言ではない。

ミルクキャンディーのシェアを奪還せよ

「ミルクの国」は、北海道産の練乳と生クリームを使い、ミルクのおいしさをそのまま味わえるようにこだわった。また、発売された1984年はグリコ・森永事件が起きた年。お菓子にも安心・安全が求められるようになり、従来の“ひねり包装”から個別に封された包装にしたのもヒットの要因となった。

ところが、後発の「特濃ミルク」や「金のミルク」が登場すると、「ミルクの国」は、ミルクキャンディー分野で4位〜5位に陥落。長い間、その地位に甘んじていた。

「『ミルクの国』をはじめとするロングセラー商品が沢山あったので、新ブランドの構築に今ひとつ注力できていませんでした。既存の商品をベースに味を変えたりすることが商品開発部の仕事になりつつありました。売れる商品を作るために専門的な技術性を高めていく本来の姿に戻そうと、2018年9月から部内にチャレンジチームを発足させました」と、話すのは商品開発部部長の鈴木克明さんだ。

それまで商品開発部では、商品ごとのチームに分かれていて、それぞれがどんな開発をしているのかよくわからない状態だった。とくにお互いの専門範囲のことに対抗意識があり、それが逆にチーム間においては障壁となっていた。

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