コロナ自粛に「凍りついた」人気バンドが語る実態 「ノンラビ」が直面した有観客の音楽活動の困難

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――ノンラビは、東京・池袋のharevutaiで撮影した無観客ライブ映像を、2021年5月に発売したメジャー初シングル「三大欲求」にDVDの付属として付けています。ユーチューバーとしての画面越しの活動、バンドとしての画面越しの撮影。この2つに違いはありましたか。

田口:まったく別です。無観客のライブは、ライブを本当にしている感がなくて。どこを見て演奏をすればいいのか、わかりませんでした。戸惑いながら撮影しましたね。なんならDVDのために撮った”収録”だと考えています。ライブって観客が声を出せて、一緒に盛り上がることで成り立っていますから。

矢野:これまで、お客さんを楽しませるために僕たちはライブをしてきました。ただ、お客さんがいるライブができないと、すごい暗い気持ちになっていき……。自分たちのための表現の場が失われて、初めて気づきました。自分たちの存在意義のためにも、ライブってあったんだと。

矢野晴人さん。ボーカルとベースを担当(写真:乾真規)

コロナ禍でファンとの関係性がより難しくなった

田口:ファンとの関係性ってコロナ禍で、より難しいものになった。ライブって、僕らとファンを大きくつなぎ止めている一番のツールだと思います。ライブで味わう感動って、それくらいの強さがあるんですよ。そんなライブができない今だからこそ、YouTubeで音楽や動画を無料で配信したりしています。

僕たちのバンドのファン層は10代や20代の女性が多く、歌詞ではどんなフレーズが刺さるかなど日々研究をしています。若い子にアプローチして、つなぎとめておくとかじゃないですけど、そのへんは考えなきゃいけない。難しくもあり、楽しいと思う点でもあります。大きなイベントができなくても、どうやればファンはファンでいてくれているのか。これからもつねに考えていきます。

――振り返ると、2021年はどんな年でしたか。

田口: ライブができないことのストレスを抱えたものの、そこで停滞しているだけではなく、つねに「何か動かなければ」と考え続けた1年でした。とにかくトライアンドエラーで行動を続けました。例えば、アパレルブランドを立ち上げたり、YouTubeのチャンネル投稿も毎日したり。毎日のチャンネル投稿はそろそろ2年くらいになりますね。

僕らは「何かしらの感情をファンに届けたい」という気持ちがつねにあります。ただ、それよりも休むことがとても怖かった。休むと、グループの存在が死へとつながる感じがしたからです。ライブができるようになる日のためにと準備をコツコツ進めていても、ファンの人から「ノンラビっていなくなったよね」と言われたりするのが、僕ら本当に嫌で。

なので、毎日露出することが大切と考えたんです。自分たちの活動をどんな形でもいいから、とにかく見てもらう。そうすることこそ、僕たちグループが生きている証だと考えています。

現時点で、3月14、15日にライブを予定しています。ただ、もしかしたら、2022年もライブができなくなってしまうかもしれません。今後もこういうことが起きると思って生きていかなきゃいけない。ノンラビとして、音楽にすがるだけではなく、とにかく間口を広げて何かしらに挑戦しなければいけない。これが僕たちの学びです。

取材:板垣聡旨=フロントラインプレス(Frontline Press)所属

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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