コロナ自粛に「凍りついた」人気バンドが語る実態 「ノンラビ」が直面した有観客の音楽活動の困難

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「いきなりやめてください、なんてこれまで一度も言われたことはなくて。その分、大きな危機が起きているんだなと」と田口さんは言う。

知らせを聞いたスタジオからそのまま、その思いを2020年2月26日夕方、Twitterに投稿。その“本音ツイート”は4万以上リツイートされ、8万2千以上の「いいね」が付いた。

(画像:田口さんのツイートより)
■Twitterへの投稿文(抜粋)

ファンのみんな、関係者の皆様へ。

Non Stop Rabbit 全国ツアー2020

3月1日に開催予定のツアーファイナル豊洲PIT公演を中止する事に致しました。

この日のライブを楽しみにして下さっていたファンの皆様、本当にごめんなさい。

ここからは僕個人の意見を発信させて下さい。

ノンラビは(株)UNorder music ent という僕、田口達也が代表取締役社長、メンバー2人が社員という形態の事務所を自分たちで経営しています。

今回のコロナウイルスによるライブの中止で保険はおりません。豊洲PIT公演にかかる会場費・制作費・人件費・グッズ代は1000万円を超えています。通常通り開催できていればチケットの売り上げは1200万円を超えている為、赤字になることはありませんでした。

ファンを守れるのであれば、今回の赤字を背負うことに抵抗は全くありません。

感情論を抜きにした現実的な話です。

僕らの様なアーティストはこの規模のライブの中止で会社すら潰れかねない損失を受けます。音楽という仕事すら続けられなくなる可能性が中止の決断一つで出てしまうのです。

そしてこの規模の会場は短くても1年以上前から予約をする事でライブの実現が可能になります。なので今の状況では振替公演の場所を確保することもできていません。

本日2月26日12時半頃、首相からイベントの中止・延期要請がありました。
それを受け、大切なファンを守るべく僕たちは公演を中止とする決断をしました。

ここで疑問を覚えました。社会がこの状況でも平常運転ということです。電車は多いところで1日約70万人の方が利用をします。会社や学校という人が集まる場所の対策も明言されぬまま2019年末コロナが発現してから現時点で約3ヶ月が経過。なのに検査ができる体制も整っていない。

患者はコロナに感染するとバッシングを受けるから隠したい。地域も観光客が減るから隠したい。政府は発熱しても4日間は自宅療養しろという対応。これで感染者が減る訳がない。

その状況下で大規模イベントやコンサートは中止してほしいという政府の要請。

俺はウイルスに感染していない。でも自分の会社、アーティストの人生が終わる可能性が出る状態まで追い込まれた。

そうなったからこそ言える。本当に国を挙げて対応して欲しい。1人でも救われて欲しい。アーティストは本気でファンを守る決断をします。その決断でアーティストに矛先が向くことがあると分かっていても。

自分たちで音楽事務所を経営する理由

田口:マネジャーさんからは「赤字額を書かないで」と言われました。でも、絶対に書かなくちゃと思って。僕らの思っていることを絶対に届けたい、生々しい現状を伝えたい、そう考えてこの投稿を作りました。結果として、テレビやネットメディアにも取り上げられました。

僕たちは音楽事務所を2017年から自分たちで経営しています。だからこそ、できたことでもあります。自分たちで赤字を背負っているので、公に言えたのかな、と。他のアーティストさんの赤字はその所属する会社の赤字でもあるので、こんなふうに言えないと思います。

――個人で音楽事務所を経営しているのは、どうしてでしょうか。

田口:「自分たちらしさ」をどう確立するか。そのためには、自分たちに最終意思決定権があり、自分たちで選んで行動できる環境が必要と考えたからです。自分たち、最初は本当にお金がなくて……。

路上ライブ時代はメンバーのみんながバイトしていて、月8万円を1人ずつ、グループの活動に充てていました。高い機材もなかなか買えない時代で。やっぱり自分たちが活動するには、どこかの会社に所属しなければいけないのか、と考えていました。

そんなある日、メンバーでドラム担当の太我の父に呼び出されました。「おまえら、いけると思うからこれやるよ」と言われ、箱からぽっと500万円を出されて。会社設立の軍資金となりました。

リーダーの田口達也さん。コーラスとギターを担当(写真:乾真規)

太我:うちのお父さん、すごいですよね。パンチありますよね。父は、建設系の会社を経営しています。ただ、25歳になるまでにバンドで飯が食えなければ辞める、と。それが条件でした。とにかく死に物狂いで、目の前の活動に取り組んできました。

ドラムを担当する太我さん(写真:乾真規)
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