新しい価値生み出せない企業の「人材採用の問題」 名経営者には「転結」を担う「名番頭」がいた

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「起承転結社」を立ち上げた私の友人の小柳津誠さんがやっている、1泊2日の「起承転結」理論に沿ったユニークな研修を紹介します。

まず事前に、研修に参加する各人の「起承転結」タイプを分類する「起承転結サーベイ」を受けます。そして、自身の「起承転結」タイプを認識してもらったうえで「Hot Spot研修」が実施されます。彼は、東京ディズニーランド(TDL)のような多くの人々が集まる場所を「Hot Spot」として研修会場に設定します。例えば、TDLであるならば次のような内容になります。

初日はTDLを「1人」で回ります。集合研修ですから参加者は共通体験をすることになるのですが、この研修では「起承転結」のタイプごとに異なる課題が与えられることになります。

「起」の方には、「TDLの新しいアトラクションを企画しよう」。
「承」の方には、「TDLの最適コラボレーション企業を探そう」。
「転」の方には、「TDLおススメ1DAY MAP(カップル編・家族編・おひとりさま編)をデザインしよう」。
「結」の方には、「もっとよくなる! TDLを治療するのはあなた」。

翌日には全員でレビューを行う

そのうえで各課題について気づいたり、感じたりした場所や風景・コメントを、そのつど事務局宛にスマホから送信します。そして翌日は全員でレビューを行います。

『たった1人からはじめるイノベーション入門』(日本実業出版社)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします

この翌日のレビューがこの研修の特徴であり、面白さでもあります。相互に意見交換を行うことで、わかりやすくお互いの「特性」が理解・共有できることになります。さらに、これらの課題はそれぞれが「得意な分野」なだけに、出てくるアウトプットは件数も多くなり質も高くなります。

レビューの場で、お互いに自分で考えるよりもタフで刺激になるアウトプットに出合えるというのは、「起承転結」が相互に大切な存在であることを実感する貴重な機会にもなります。

「起」の先のこと・新しいことを思いつく力、「承」のグランドデザインを描く力、「転」の論理的な思考に強い力、「結」の細かいことも飽きずに精緻に観察する力、それらを同じ風景の中で具体的に理解し合うことで、自然に仲間としてのリスペクトが生まれ、お互いのパフォーマンスを活用する場面がイメージできるようになります。

「起承転結」人材全員でディスカッションすることによって、横通しのダイバーシティーや情報の共有化が起こるので、お互いが触発されて新しいものが生まれます。普通、「研修」というと、例えば「論理分析」がテーマだったら、本人の特性に関係なくすべての人間が論理分析の研修を受けるわけです。

しかし、論理的に考えるよりも、それを超えたところで新しいモノを創造するのが得意な「起」の人材にまでそれを強いるのは、おかしいだろうと。そこで、いまお話ししたような研修をはじめた、と彼は言っていました。理に適った、面白い研修です。

竹林 一 オムロンイノベーション推進本部インキュベーションセンタ長、京都大学経営管理大学院 客員教授

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たけばやし はじめ / Hajime Takebayashi

「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」との理念に感動して立石電機(現オムロン)に入社。新規事業開発として鉄道カードシステム事業やモバイル事業、電子マネー事業などに携わった後、事業構造改革の推進、オムロンソフトウェア代表取締役社長、オムロン直方代表取締役社長、ドコモ・ヘルスケア代表取締役社長を経てオムロン株式会社イノベーション推進本部インキュベーションセンタ長を務めるとともに、京都大学経営管理大学院客員教授として「100年続くベンチャーが生まれ育つ都」に向けた研究・実践を推進。

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