ホンダ「6代目ステップワゴン」王者復権への狼煙 新旧比較と総括、苦戦するミニバン市場で再起

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ステップワゴンの競合であり、ノア/ヴォクシー同様に販売好調の日産「セレナ」(写真:日産自動車)

セレナは、女性の目線で使い勝手を確認しながら開発が行われ、Sハイブリッドと呼ぶマイルドHVを選択肢に持っていた。さらに2017年には、シリーズ式ハイブリッドのe-POWERを搭載することで爆発的な販売となった。ほかにも、プロパイロットと呼ぶ運転支援機能をセレナから投入し、これによって3列目に座っても車酔いしにくい走行を可能にした。

競合2車の好調は、HVをひとつの記号とした日本の環境意識と、運転者だけでなく同乗者を含めた移動の快さを求め、家族のためのミニバンという立ち位置を崩していないことにあるのではないか。

エアーとスパーダという2グレード構成の狙い

力強い存在感」と伸びやかなシルエット、品格ある佇まいが印象的な新型スパーダ(撮影:尾形文繁)

そこを重視したのが、新型ステップワゴンといえそうだ。

事前に開かれた説明会では、新型の開発で求めた全体像と造形や使い勝手の進化が中心となり、動力性能などには触れられなかった。そして、新型の開発陣も、前型は5ナンバーミニバンとしての基本価値の追求が十分でなかったのではないかと振り返った。そのうえで、5ナンバーミニバンの価値を、素敵な暮らしのパートナーと位置づける開発を行ったという。

コンセプトである“素敵な暮らし”を見ただけで伝わるデザインを目指し、安心と自由にこだわったエアーのエクステリアデザイン(撮影:尾形文繁)

新型の目新しさは、これまで標準車の位置づけだった車種に「エアー(AIR)」というグレードを与え、標準車+派生車種スパーダという従来の関係ではなく、「エアー」と「スパーダ」を対等な関係の位置づけとし、趣旨を明確にわけた選択肢に改めたことだ。エアーとは、まさしく空気のことであり、普段は意識しなくても空気のように不可欠で、かつ暮らしに溶け込んだ存在であることを目指す意味があるという。

脱二酸化炭素が日々語られ、持続可能な開発目標(SDGs)があらゆる面で意識される今日、清浄な空気(エアー)という価値は、まさに暮らしを安らかにするミニバンの尊さを表しているといえるのではないか。

直線的で縦長なテールランプは、ステップワゴンらしさが表れている(撮影:尾形文繁)

エアーの外観は、ひと目見たときから心の奥深くに浸透し、馴染む姿だ。外観を見ただけで暮らしに安らぎと豊かさが溢れそうな思いにさせてくれる。同時に、その全体像は初代から2代目へかけて、爆発的人気を得た初期のステップワゴンの姿を思い起こさせる。なかでもテールランプの造形は、ステップワゴンの象徴的な個性だ。

世界的に簡素な造形のなかに豊かさを表現する傾向があり、エアーはその流れに沿った造形であるのはもちろんだが、美しさと親しみやすさに安心を加え、人に寄り添う姿が上手に表現されている。

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