台湾有事で「戦場」に変わる石垣島島民の不安 ミサイル配備で高まる中国からの攻撃リスク

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少し前までの日本では、中国は主に経済的な好機をもたらす存在とみられていた。確かに領有権や第2次世界大戦の歴史、貿易といった問題をめぐって緊張が高まる場面もあったが、中国が日本の安全保障に深刻な脅威をもたらすという考えに取りつかれているのは大部分が右派だった。

しかし情勢は変化した。今ではあらゆる党派の政治家が香港と新疆ウイグル自治区における中国の人権侵害について懸念を示すようになっている。世界のサプライチェーンに対する中国支配を問題視する声も、党派を超えて広がるようになった。

日本社会における認識の大きな変化

さらに日本の政治家は、中国の軍拡という安全保障上の難題にも直面している。中国は台湾を脅かしているだけでなく、尖閣諸島沖で日本の領海に侵入を繰り返してもいる。尖閣諸島は中国で釣魚島と呼ばれる無人島で日本の管理下にあるが、これに対し中国は領有権を主張している。

日中関係に詳しい九州大学の益尾知佐子准教授によると、新型コロナ禍によって中国のナショナリズムが高まり、アメリカが中国との競争を激化させる中、この1年で「日本社会には認識の大きな変化」が見られるようになったという。

「人々は今、最悪の事態に備えようとしている。それは戦争ではないかもしれないが、経済的な安定は長期的に中国の影響を受ける可能性がある」と益尾氏は言う。

中国に対する日本の政治的な見方の変化は、とりわけ台湾問題に顕著に見られると、神奈川大学で日本の外交・安全保障政策を研究しているコオリ・ウォレス助教は指摘する。日本は長年にわたり、台湾と文化、経済、安全保障上の利害を共有してきた。

日本は台湾について危機感を強めるようになっている。7月に公表された防衛白書には、台湾情勢の安定が重要だと初めて明記され、中国軍とアメリカ軍の緊張の高まりが地域の安定に深刻なリスクをもたらす可能性があるという警告がなされた。

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